ツガイドリ

□剥き出しの悪意に眠る
1ページ/10ページ






─The ghost who knows love─





『嫌な天気だね。ここの所、ずっと雨だ・・・』


『・・・ひっ』


『ねぇ。断罪者。君の世界にも雨は降るのかい?』



『────アッ、ア!!』



『はしたないなあ』



こんな時。トウマ・シグレは
イカレてると、つくづく思う。
『断罪者』を捕まえて来たかと思えば
力尽くで鎖に繋いで、地下室に閉じ込めて
衰弱してきた頃に、目の前で
複数の部下に回させる。
自分は煙草を吸いながら
悠々とソファーで足を組んで
白い羽が犯される様を見て嗤ってる。
人並み以上に美しい顔は穏やかで
罪悪感なんて欠片も無いように見えた。


『ねぇ。この間、ちょっと試してみたんだけどさ。断罪者の血肉を屠ると。不死が宿るってアレは、本当?』



『ふっ・・・んんん──っ、』



『・・・はあ。お話にならないね。これに関しては聞くよりも実践で試した方が早いのかなあ。まあ、定期摂取するにしたって、お前みたいに汚いのは流石に御免だけど』



『んっ・・・、やっ』



『───ねぇ、高貴な神の使いとやらが。底辺中の溝鼠に犯される気分って、どんなものだい? 口に汚ぇ野郎のイチモツぶち込まれて、後ろにデカいの突っ込まれて、キレイな身体に、垂れ流しのザーメンぶっかけられるのって。どんな気分?』



『ふっ・・・ぐぅっ・・・』



『泣いてんだか喜んでんだか判らないな。───ああ、ほら。そこのお前。つっ立ってないで。暇なら俺の靴、綺麗にしてくれない?』


泣き狂う断罪者を前にクスクスと嗤って
自分は部下に靴を舐めさせる。
半裸の男が、うっとりと跪き
トウマの脚に触れた。靴の底を舐めて
ハアハアと息を乱してる辺り
憐れむ余地もなく、ただただ
穢らわしい連中なんだと思う。
興奮が助長したのか、靴だけじゃ
足りなくなってトウマの脚を
舐めようとした瞬間に
彼の頭は蹴り飛ばされた。


『誰が。俺に触って良いって言ったんだ? ん?』



『す、すみませ』



『靴をって。言ったんだよ、俺は』



『はい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい、トウマ様・・・』



『調子に乗るなよ、溝鼠』



『トウマ様・・・っ!』



立ち上がり、咥えてた煙草を
彼の背中で潰すと
トウマは『ああ。そろそろ時間だ』と
背伸びして一人、部屋を出て行った。
これだけの狂った状況を作り出しておいて
何にも無いような顔をしてるから
『異常』としか形容できない。
半裸の男は恍惚としていて
その後『トウマ様』と譫言をあげながら
自慰を始めたから
やっぱり憐れむ余地もない。



『なあ。アンタもいっそ、こんぐらい壊れた方が、楽なのかもしれないぞ』



地獄絵図。それに尽きる。
断罪者は、鳴きながら
恨めしそうに俺を見ていた。
精液にまみれ、グチャグチャな彼の
白い羽根は。見るも無残な姿で
まあ『ご愁傷様』としか言いようもなく。
俺も部屋を後にした。




『・・・、』



『ん? どうしたの、ヒサメ?』



『あの断罪者。どうするんだ?』



『さあ。どうしようねえ』



『・・・あのまんまじゃ。衰弱しきって死ぬぞ』



『そう言われてもねぇ。別にどうでもいいんだけどさ。ほら最近の「断罪者」は、兎にも角にもイザヤを狙ってるって言うし。それはやっぱり、兄として聞き捨てならないじゃない?』


『・・・あれが弟を心配する兄の優しさの現れだってなら。反吐が出る』


『優しさ? まさか。今更、心配も何も無いよ。イザヤは強いし、とても賢い子だからね。わざわざ俺が守ってやる必要はないんだ。ただ、ほら』


『俺のだから、あの子は』と
ニッコリ微笑んだ顔に寒気がした。
底なしの闇を讃えた瞳と
目が合ってしまい、ゆっくり瞼を閉じた。
トウマと目を合わせると
その、深く凍てついた闇に
呑み込まれそうになる。
ふと。唇に熱を感じて目を開ければ
じっと俺を見つめて
『目を逸らすな』と囁く。


『──所有物を汚されるのって。嫌なものだろ? 誰だって』


『・・・ヴィルヘルム・テスタメントは野放しでいいのか?』



『まあ、そのうち』



この男は。いつだって目的が見えない。
穏やかに微笑んで
表情と真逆の事を口にする。
碌な事を考えてないのは確かだ。
『自分のもの』と『それ以外』で
物事を計り『それ以外』に対する冷血さは
目に余るものがあって。
特に実弟であるイザヤ・シグレに対する
執着は尋常ではない。
『悪道』に当てられ狂った哀れな男だ。
唯一残った『弟』に対する愛情も
歪に腐り果てて、狂気を孕んでる。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ