ツガイドリ

□罪人は夜に堕ちる
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それは、唯一の希望的観測。
正しくもなく。美しくもなく。
純粋な情欲と、狂気を孕んだ執着。
ほんの僅かな優しさに彩られた
とても醜い『感情』だった。
それは、依存とよく似ていた。
身勝手で、独善的で、底意地の悪い
けれど、決して揺らぐ事は無く
誰もが焦がれてしまうほどの熱を纏った
激しい『衝動』だった。





『・・・俺を独りにしないって言ったじゃねぇか』



『うん』



『何で、お前が。約束破るんだよ・・・』



『────、』



誰が二人を引き裂けただろう。
それは紛う事なき『愛情』の賜物。
世界で一番純粋で。
とても諦めが悪かった。
絶望的な未来を常として携えていても
必ず互いを選んでしまうと言う愚かさ。
その度、どんどん
薄れてゆく良識の数々。
哀れにも、惨めにも。
それを貫き通す事しかできなかった。
実らない恋を、実らせようとした代償は
決して、少ないものではなかったが。
悲劇は、二人の間に
必ず訪れるものだから。
ある夜、彼はその運命に抗った。
『無理難題』をやってのける事にした。
ありとあらゆるものに楯突いて
筋書きと言うものを、破壊した。



『ごめんね、イザヤ』



どうか。最後の、その瞬間まで
ずっと、この手を・・・、と願う。
それは限りなく『純愛』に
等しいものだったが
そう呼ぶには少し、歪な形をしていた。
どれほど悲劇に見舞われようとも
どれほどの痛みに貫かれようとも
その手を、放してやるつもりさえ
無かったのだから。



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