ロジパラEXT

□ハロカオ
12ページ/12ページ







[Halloween Chaos Night 終幕]




─────翌日。朝から
愁水の怒鳴り声が屋敷内に響き渡っていた。




『いやはや。誠に申し訳ありやせんでした。まさか、あんな事になろうとはー、あ、無論全て修理、弁償致します故、ご安心を!』



『だーかーらー、そう言う問題ではない! お前の沸点は低過ぎると言ってるんだ! ほんの些細な事で屋敷やら何やら壊されてちゃ、身が保たん!誠人なんか、集めていたガラス細工を壊されて廃人みたいだったんだぞ!!粉々だから復元も使えないって、そりゃあもう、ゲッソリと!』



『いやあ、彼のコレクション品、調べてみたら大変高価な物だったようで。可哀想な事をしました。とりあえずネットで同じ物を探しておりやす。ああ、愁水のプランターは後でホームセンターにでも行って買ってきやす。祟場さんの部屋の棚と窓は、今日中に直しておきます故』



『まったく。油断も隙もあったもんじゃない。お前やイノセントが此処で大暴れしたらどうなるか、お前が一番判ってるだろう?』



『そーでやすねえ。本当に反省しておりやす。でも。実を言いますと。不謹慎ながら、少し楽しかったのは・・・悪い癖ですかね? 時折、本能的にね、渇く事があるのは確かです。化物ってのは酷く浅はかな生き物で、互いに優劣をつけたくなる時があるんでやす。己が力を誇示したくなる時がね』



『闘争本能だな。それは仕方ない。魔物のサガだからな。・・・だが。烈将。忘れるなよ。お前は魔物であると同時に、芝祈烈将と言う一人の人間なんだ。イノセとは違う。お前は自分を化物と呼ぶけど、少なくとも私は、人間と同列に見ている。だから、それを裏切るな』



『ありがたいお言葉ですねえ。ええ。知ってやす。ですから、私めは。嫉妬に駆られたのでしょう。本来、私めには有り得ない感情でやす。愁水。なので、私めからも一つ。貴女は私の主であり神であり、党首であり、偉大な魔女でもありやすが。その前に一人の女性でやす。あまりにも無頓着で無防備なのはよろしくない。優人君と言い貴女と言い、どうしてそうも、のほほんとしてるのか。私めは気が気じゃありやせん』



『いや、ちょっと待て。優人は可愛いが男子だぞ、お前』



『いえ。そーでなくて。幸も不幸も、陰も陽も。あらゆる事象を惹きつける力を持つ者の事ですよ。魅力とでも言うのでしょうか?性別も、能力も、年齢も全て超えて、存在として他者を惹きつけるものでやす。そう言うものは、悪質なものにもつけ込まれやすい』



『判っているよ、そんなことは。だから───』



『いいえ。判っていない。だから、彼も貴女も、ああ言うことになるのでやす。突然、牙をむかれれば、為すすべもなく組み敷かれる』



『うぅ・・・』



『愁水。私めは。朔月さんにも敵いませんし、イノセント程、貴女を知り尽くしてはおりやせんが。長い時を貴女に仕え寄り添ってきたつもりでやすから。その真実を裏切らないで頂きたいのです』



『・・・お前、それは』



『ええ。身勝手極まりない嫉妬でやす。そりゃーもう。メラメラと燃え上がり、グルグルと渦巻くどす黒い感情でやす。私めも、あそこまで下劣にはなれやせんが、イノセントに近しいものも多少ありやすから。食べたいとか、何だとか。ですから、気をつけてくださいな。いつ、うっかり選択を間違えるか知れたもんじゃない』



『・・・お、お前、爽やかな顔して何言ってんだ、私───』



『少しいじめ過ぎやしたか。こんな事で恥じらい動揺する貴女はなかなか見られない。貴重な顔を見せて貰いやした。では。皆さんに謝罪に行きますかね。ああ、愁水、貴女が好きなチョコレートを冷蔵庫に入れておきやした。ミスターに聞いたらハロウィンキャンペーン中だったらしいのでね、どうぞティータイムのお供に』



『本当か!! ありがとう烈将!! 私のチョコレート!!』



『甘いものに目がなく、そうやって子供のように喜ぶ様はチビ嬢と変わりやせんなあ、まったく』




───────────時幻党、大食堂





『・・・テーブルに足を乗せるんじゃないよ、イノセント』




『うーるせー、バーカ。俺に指図すんな』



『お行儀悪いですよ、いのせさん。さっさと足下ろさないとこの黒衣特製スタンガンでビリビリしちゃいますよ?』



『お前、地味に危ねぇよな』



『で、結局、僕のお髭代とマフラー代、弁償してくれるの?!どうなの?!高いんだよ?!領収書切ってあるんだからね?!そもそも魔王ってお金持ってるの?!』



『・・・あー、うるせー。マジうるせー。喚くな短足。お前の声は頭に響く』



『豚足!?僕が豚足だと言うのか!?貴様ぁあっ!!マフラーとヒゲ燃やすだけじゃ飽きたらず、まだ喧嘩売ってんのか!!ああ!?』



『叔父、短足ですよ、短足。どっちにしろ悪口ですけど』



『おやおや。何やら賑やかだと思えば、お集まりでしたか、皆様』



『おーレッショー君!!グッモーニン!!愁水君は許してくれたの?』



『ええ。いつものチョコレートで手を打ちました。皆様にも多大なご迷惑お掛けしまして』



『いえ、新薬の実験も出来ましたしー、いのせさん拘束できる機会なんてそうそうありませんし。なかなか有意義な時間でした』



『そう言って頂けると救われますね。ところで、いのせさん。随分と顔色悪いでやすね』



『・・・うるせー。バーカ。話かけんな、三下』



『おやまあ。テンションの低いこと。これまた珍しいいのせさんでやす』



『昨日の、ソレハカトナク☆チカラヌケールの副作用らしくてさ、低血圧、倦怠感、頭痛、吐き気、眩暈に苛まれてるらしい。何か二日酔いの人みたいになっちゃってさーソレハカトナク☆チカラヌケールじゃなくて、オオハバニ☆チカラヌケールに改名しないとね!』



『ましてや、二日酔いの所を懲罰会議にかけられて、この様なんですよ!と言っても叔父が駄々こねていのせさんからお金取ろうとしてるだけなんですけど 』



『懲罰会議でやすか。まあ、出なきゃ出ないでミスターに四六時中追いかけ回されそうですしね。不服ながら、と言った所でやすか。いのせさんが大食堂で椅子に座ってるの初めて見たような気もしやす』



『あー、頭いてぇ・・・吐き気がする』



『昨日の威勢は何処へ行ったやら。まあ、いい機会でやす。そこで少し絞られておきなさいな』



『マジうぜえ・・・畜生』





────────時幻党二階、祟場の書斎




『・・・ああ、おはよう。芝祈さん』



『・・・えーと』



『あ、烈将さん、おはようございます! 』



『おはようございやす、優人くん・・・あの、祟場さんは』



『昨日からずっとこうなんで気にしないでください。ずっとソファーでふさぎ込んでて、何言っても上の空だから、いっそ時間が解決してくれるのを待ってます』



『君、意外な所でシビアでやすね・・・』



『俺の・・・スタリオン・・・バカラのワイングラス・・・クマさん・・・』



『そこで私め、謝罪と弁償を兼ねて来やした。全て弁償致します故。壊れた物の明細を頂きたく』



『弁償・・・って。ワイングラスだけで、5万ちょっとするし、シャンパングラスで1万ちょっと、スワロフのスタリオンは20万ちょっとするし、クマさん6万、ハチドリ13万・・・蝶が3万の・・・龍が5万ぐらいで・・・』



『ふむふむ。了解しやした。では、今週中に全てお返し致しやすのでしばし、おまちくださいますよう』



『烈将さん、そんな、全部まとめて返せるんですか!? かなり高額ですよ!?』



『無駄に長生きしてますと、まあ。使い道の無いお金と言うのも出てくるもんでやす。書斎は今日中に修理致します故、今日は空き部屋を使っといてくださいな』



『あ、じゃあ、俺も手伝います!! 一人より二人の方が効率いいだろうから!!』



『ありがとうございやす』



『しかし、今回はとんだハロウィンでしたね。お化けよりすごいもの見た気がします。ドロドロのイノセントさん!』



『だけでやすか? 』



『烈将さんは遠くてあんまり見えませんでした。ちょっと見たかったけど』



『そうですか。屋敷から出来るだけ離れてやしたからね。プランター壊して怒られたので。けど、それなら、その方がよろしい。醜いものは、心に陰りを生みますから、あまり見ない方がね』



『陰り、ですか』



『まあ。実は君にもお菓子を用意してます。迷惑料ですかねえ。大食堂の冷蔵庫に入れてありやすから、これで勘弁してくださいな』



『わーい!やった!』



『ハロウィンに乗じるなら。お菓子をあげるからどうか見逃して、って所でね?』





.
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ