ロジパラEXT

□怪物は多忙極める
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[静寂は懐古を惜しむ]




果てなき銀世界の寂寞。
白を以て何もかもを埋め尽くし
この記憶さえ染めてくれそうな程に。





『どうしたんだい?レッショー君。妙にセンチメンタルジャーニーなお顔して』


『いやあ。そんなつもりはありやせんが。そう言う風に見えやしたか? 景色に見とれていただけでやす』


『ああ、雪?積もったもんねえ。愁水くんが描く季節は綺麗だよねえ!』


『ええ。彼女の四季折々は懐かしさで溢れてる。共に見た遠い遠い昔の景色でありやすが。今も尚、鮮明に甦りやす』


『そうだね。軌道外は愁水くんの見てきたものを投影しているからね。彼女が、この次元の核心である限り、きっと、僕らの思い出の断片はあらゆるものに散りばめられているよ。いつも』



『ええ・・・今は亡き過去の産物が恋しくなるのは老いた証拠でしょうか? 私め時折、いたたまれなくなるのでやす』


『いやいや。懐古もまた、人生の拠り所だよ。レッショー君』


『・・・だとしたら。少しばかり寂しいのかもしれません。今となっては、この手の届かない過ぎ去りし日々が』



『幸せな思い出って。たまに酷なものなんだよ。現状を愛していたって、過ぎ去ったものは恋しくなるんだ。人は欲張りだから』



『・・・実に』



『僕もたまに思い出すよー。愁水君やロアと冒険した事とか、大喧嘩した事とか、家が爆発した事とか、指名手配にされた事とか、みんなでお祭りした事とか。沢山』



『家が爆発した事は、たまに思い出さずとも。日常茶飯事では?』



『むぎいいっ!! チミね、そんな所で噛み付いてくるんじゃないよ!!』



『冗談でやす』



『───、なあ。レッショー君。外でさ、下北沢君とニュートンと姪が、雪だるま作って遊んでるんだけどさ。参戦しないかい?独りでセンチメンタルジャーニーするよりさ、超絶クオリティの巨大雪だるま作ろうぜ!!魔界雪だるま作ろうぜ!!』



『・・・。ミスターが作ると洒落になりやせん』



『HAHAHA否めない!!』



『まあ。折角のお誘いなら、少しばかりお付き合いさせていただきやすか』



『HAHAHA是非ともそうしたまえ!!暇じゃろ?暇じゃろ?』



『・・・感情と言うやつは時折、虚無や感傷に連なって頑な意志さえ孤独で蝕みます。けれど、それを他人に話すと少しばかり楽になる。───感謝でやす、ミスター』



『そうだねえ。うんうん。それは良かった。折角、お庭がホワイティなんだ。ロンリネスなウィンターより、ハッピーなウィンターがよいじゃまいか?』



『ええ。では、白銀の思い出に、また一つ。新たなページを書き足しましょうか』



『超絶魔界雪だるまを作った!ってね』



『それはハードル高いでやす・・・』




有限の銀世界に視る記憶は煌びやか。
心の中。枯れ果てることないよう
白に白を重ねて綴じる。
とても暖かい思い出として、また一つ。



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