猫は煉獄で夢を見る

□零の世界にて
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─memory×7─





シュバルツは『つんでれ』だって
ラグが言ってたけど。
うん。確かにこれはなかなかの。




『ネコ。暇なのか』



『にゃーん』



『・・・、そうか』




口調とは裏腹に僕の頭を
撫で回す手が止まらない。
遊んで欲しいのは判るが
こうもわしゃわしゃされると目が回るって。




『にゃ。にゃーん』




僕はシュバルツの手に噛み付いたけど
やっぱり効果はない。
人間って強いな、どいつもこいつも
噛まれて尚、平然としてるんだから。




『かつおぶし。食べるか?』



『!』



シュバルツはポケットから出した
ビニールパックを開けて
僕の顔前に差し出した。
どうやら遊んで貰った礼がしたいらしい。
僕は、遠慮なくそれを貰う事にした。
かつおぶしは美味しい。
でもお腹に溜まらないから
できたら沢山ほしいな。
死ぬまでに、この船を埋め尽くすぐらいの
かつおぶしを食べてみたいと思う。



『美味いか?』



『にゃんにゃ』



『・・・』




シュバルツは、つんでれ。
ラグがいるとヒステリーだけど
それ以外では寡黙な男だ。
あんまり好きじゃなかったけど
かつおぶしをくれる人の評価は高い。
ゴロゴロと。喉が鳴る。




『ネコ。お前は良いな、気儘で』




そう呟いたシュバルツは
何となく元気がないように見えた。
さっきラグと喧嘩したのを
気にしてるのだろうか?
まあ、だからって羨まれてもね。
ラグが好きなら仲良くすればいいのに。
気になるなら追いかければいいのに。
すぐ喚くから、喧嘩になるんだよ。
ラグは、そんなに悪い奴じゃない。
ちょっと色々、やらかしてはいるけど。




『にゃん』



『・・・美味かったか? 良かった』




食後は顔を洗う。シュバルツは
黙って此方を見てた。
僕が気儘だって言うけど
僕だって色々考えてるんだ。
今日は何処で寝ようとか
何を食べようとか、これは結構。
僕にとって大事なことだ。



『餌付けしてんなよ。此処に居着いたらどうすんだ』



『・・・ノイン』



『餌やんなら自分の部屋でやれよ』



『貴様も。ゲームで遊びたいなら部屋に行け。此処は憩いの場だ』



『ハァー。どいつもこいつも猫優先って。頭沸いてんじゃね? 猫ごときに振り回されてんじゃねぇよ、バーカ』



『ゲーム狂が猫に嫉妬か? 見苦しい』



『お前と一緒にすんな』




絡んできたノインは
僕を不愉快そうに睨みつけてきたけど
シュバルツに怒られて
そそくさと立ち去った。
ノインは、たまにだけど
とても嫌な感じがする。
それは好き嫌いの話ではなく
多分、本能的に。
シュバルツは僕の頭を撫でて
『こんなに可愛いのにな』と
小さな声で言った。
つんでれさんは伊達じゃない。
僕は少しだけシュバルツを見直した。




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