猫は煉獄で夢を見る

□零の世界にて
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─memory×4─




自立思考型機動戦艦ノア
それが『彼女』の名前。
戦艦であって、意思のある
立派な生き物だから。
きっと悪意にも敏感で。





『あはは。ノイン君、そんな所で何してるんです?』



『見りゃ判るだろ? ゲーム。邪魔すんな』



『ゲーマーさんは呑気だねぇ。ああ。ソレスタ士官が解決したみたいですよ、非常事態。良かったね』



『あ、そ』



『・・・墜落は免れた。けどね』



『根本的な解決はしてない。修復すりゃいいってもんじゃない、だろ?』



『そう』



『悪意ってのは。上手いこと馴染むが。溢れかえる違和感を隠せない時がある。持論だがな』



『だね』



管制室から出て、少し行くと階段がある。
そこを降りると休憩所になっていて
沢山の椅子とカウンターキッチンがある。
人間は、ここで軽食を食べたり
飲み物を飲んだりするんだけど
一番隅っこにあるベンチだけは
いつもノインが占領してる。
彼はそこで寝っ転がってゲームをしてる。
今日も今日とて変わらずに。
艦内で起きる何事にも興味が無いみたいで
ずっとゲームをしてるから
ちょっと可哀想になるぐらい。




『おや、猫君。散歩中ですか?』



『にゃー』



『おいで』



『にゃーん』



ノインとお喋りしてたフライハイトを
じっと観察していたら僕に気付いた彼に
抱きかかえられてしまったものだから
彼の服にぎゅっとしがみついた。
フライハイトは、僕の頭を
撫でてくれるから好きだ。
たまに鼻をつつかれるけど。
ノインは寝っ転がったまま
『・・・近付けんなよ、猫』と
目だけこちらに向けて呟いた。
超がつくほどの猫嫌い。
迂闊に近寄ると、追い払われるから
僕はノインの側には行かない。
猫だって猫嫌いな奴は嫌いだ。




『あはは。ゴロゴロ言ってる』



『・・・そのままどっか行け。邪魔だ』



『はいはい。重度のゲーマーさんは嫌ですねぇ。些細な事ですぐ怒る。ほら、オタクが怒ってるから、行こうか、猫君』



『にゃーん』




『・・・マジうぜぇ』







────────────管制室.







『しっかし、困ったぜ。どーするよ』



『何がだ?』



『・・・人生にアクシデントは付き物だが。ノアからなかなかアレな話を聞いちまった』



『?』



『どーしたもんかなー。やべぇぞ、マジで』



『何だ。勿体付けてないで言え』



『・・・、いや。お前に言っても仕方ねえ。独り言だ、気にすんな』




『な!!』




『はあー。毛玉何処行ったんだよ、毛玉ーこーゆー時こそ、お前の出番だろー? 俺の愚痴聞き係ー! 出てこーい』



『ラグ=ソレスタ・・・貴様』




『あ、言っとくけど。別に俺。お前をバカにしてねえし、舐めてもいねえし、苛めてもいねえからな? キレんなよ? 面倒くせぇ』




『───────、』




『ほらほら。それ。眉間に皺寄せんなって。お前さあ。折角、綺麗な顔してんだから。少し笑えよ。笑った方が、可愛いし。綺麗だし。その方がきっとモテるぜ?』




『───さ、触るな!! 余計なお世話だ!!』





──────────ガシャンッ





管制室は地下エリアと大体繋がってる。
だから地下の休憩所からも
非常階段を使えばすぐに出て来られる。
廊下を通るよりは多分、早い。
僕らは非常階段側の入り口から
管制室に入ったんだけど
ラグとシュバルツが何か話し込んでて。
全然僕らに気がつかなかったから
フライハイトは面白そうだって
二人の様子を覗き見る事にしたんだ。
ラグとシュバルツの話し合いなんて
早々続くものじゃない。
何分で喧嘩になるだろう?
でも、その空気ときたら物凄く険悪で
猫の僕でも不快を感じる程だったから。
流石にラグが、少し可哀想に思えて
助けてあげようかと思ったけど。
途中で愚痴聞き係呼ばわりされたから
むかついて見送ることにした。
僕を何だと思ってるんだ、アイツ。
案の定シュバルツは
数分でぶちギレてしまい
顔を赤くして管制室を出て行った。




『・・・って。赤面してんじゃねぇよ。ちょいちょいそんな気はしてるが、流石に洒落にならねえよ、シュバルツ君』




一人で呟くラグは、頭を抱えて
コントロールパネルにうなだれる。
ラグにはラグの悩みがあるらしい。
それを見て爆笑するフライハイトは
意地が悪いんだなあと思った。





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