猫は煉獄で夢を見る
□零の世界にて
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─memory×2─
『───シュバルツ、何者かによってアーカイブがやられた。艦内の全システム系統がコントロール不能だ。あと一時間もしない内に、この艦は零世界に取り込まれる』
『ええ、判っています。フェリスから状況は聞きました。ご安心ください。何とかしてみせます、必ず』
『心強いものだな、士官』
『副長・・・』
『君にそれが実行できればの話、だがな。機動源をやられているのに、どう対処すると言うんだ?』
『この船のあらゆる非常事態に備え、我々特務部隊がいるのです。お任せください、誰一人として死傷者は出させません。絶対に!』
『・・・・そうか。では君のその言葉を信じよう。若者の戯れ言。根拠の無いその自信を』
『総監・・・』
『私は。この船に従うのみだよ、シュバルツ君』
『───システム機動エラー「17-61000」とあったようですが、そんなエラーコードは存在しない。突然全てのコントロールを受け付けなくなっている点で、これは恐らく故障等ではなく、ノアの自立思考回路に問題が発生したものと見られます』
『何らかの不正アクセスを受け防衛機能が作動した可能性は?』
『この戦艦のメインシステムは一介の人間にどうこう出来るような代物ではありません。我が一族は、代々この船を管理してきましたが。知っての通り。ノアは電子の海の情報粒子で出来ている。異端の存在です。自立思考、即ち意識を持っている。我々は戦艦としての表側を管理しているだけに過ぎません。そんなものに手を加えられる輩がいるとしたら、それは神にも等しい技術者か、同じ異端のどちらかでしょう』
『ああ。本来、人間に制御できない代物を支配しようとすれば。時に反乱を起こされても、抗う術無しと言うワケだ。何とも滑稽なものだ』
『総監。デウス・エクス・マキナですよ。機械仕掛けの神など、歪にも程があります。だからこそ。切り札は常に用意しておくべきなのです』
暇だったから管制室を覗いてみた。
爺さん方とシュバルツが
真剣に話しこんでる。
電子がどうとか機械がどうとか。
堅苦しい話。猫には関係ない。
僕はと言えば、草をかんでる。
希少な観葉植物だとか何だとか。
爺さんの大事なものらしいけど
僕から言わせて貰えばただの草だ。
猫にとっては胃薬みたいなもんで
これをかまないと気持ち悪くなるんだ。
毛玉がごろごろするの。
別に草が美味しいわけじゃないよ。
『切り札、か。ノアと話せる奴ならいるが───』
『ノアと話せる?』
『ラグだ。ラグ=ソレスタ』
『・・・奴が、ですか?』
『そう。異端と言うならば。彼こそが、だ・・・あの通り気紛れで。一筋縄ではいかんがな』
『初耳ですよ。なるほど。あのラグが・・・奴もまた異端の存在と言う訳ですか』
『機密事項だがな。何せ奴は───』
『・・・。兎に角。今は生き残る為に、あらゆる可能性に懸けましょう。優先すべきは全乗員の命です。あらゆる非常事態において、乗員の生存率を上げるのが我々の仕事なのですから───』
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