長編

□アヒルと不運とプロ忍と
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「んっ…んん…はぁ……ん…ぁっ」

 閉め切られた薄暗い部屋の中、微かに響く甘い喘ぎ…

同室者は忍務で居らず…
その喘ぎを聞く者は自身以外にないというのに、声が漏れる事を恐れるかのようにキツく唇を噛み締め、独り快楽を追う

閉ざした瞼に思い描くのは、忍務で出掛けている同室者の姿…

「…はっ…んぅ…」

 以前からその行為は苦手であったが、最近は独りでスル事が無くなっていた為に更に苦手になっていた…
浅ましく身を捩るが、その身になかなか絶頂は訪れず…目には涙さえ浮かんでいる

「…留さんの…嘘…つ…きぃ…全…然…イケな…い…じゃ…ないかぁ…」

 快感に貪欲になった躰を持て余し、諦めたようにその行為を中断し天井を見上げて涙声でそう呟いた

(声や仕草や表情なんか思い浮かべても…本物の留さんじゃないと、やっぱりイケないよ……)

「あ〜ぁ…早く帰って来ないかなぁ…」

「ただいま」

「!!!?」

 独り、ポツリと漏らした言葉に有り得ない言葉が返って来た事に驚き、部屋を見渡す

「伊作君は独りでスルの苦手なんだね〜」

 姿は見えず、笑みを含んだ声のみ…

事務の小松田に見つからず、此処まで忍び込んで来られのは唯一人…
 溜め息混じりにその声の人物に嫌みをぶつける…
「人の下半身事情を盗み見るなんて、とても良いご趣味ですね…粉もんさん」

「酷いな…来てみたら真っ最中だったから出るタイミングを失っただけだよ………それに、私の名前は昆奈門だよ…わざと間違えてるでしょ?」

「!?…いったいいつからっ」

「んー最初から?」

「!!?」

 真っ赤になって口をパクパクさせる伊作に向かって笑顔を返す

「き、来てたなら声くらいかけて下さいよ!!」

更に赤くなった伊作を見、笑みが深まる…
しかし直ぐに真剣な表情になり、少しずつ、にじり寄りながら距離を詰めて…


背中が冷たい壁に当たる…
逃げ場が無くなったことを確認し、未だ事態を把握出来ていない伊作の耳元で囁く…

「…まだイってないみたいだったけど…」

“手伝ってあげようか…?”

「!!?な、何言って…」

「だって、満足してないと辛いでしょ?」

“心も躰も…”

 何もかも見透かしているかのような甘い囁き
首筋を擽る吐息…
触れてくる指先…
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