【ゴエモン小話】

□世界の中心は
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 錆びるでござる!

 雨が降ると、その慌てふためいて少しひっくり返った台詞が、私の頭の中で再生される。
 出会ったばかりの事だった。突然雨が降ってきて、からくり忍者の彼は慌てて屋根のあるところに避難した。

 彼は濡れるのを恐れていた。己の体が錆びてしまうのを。己の体が雨によって壊れてしまうのを。


 それなのに今はどうだろう。
 彼はそれが当たり前のように雨に打たれていた。
 一本の傘を、私を濡らさない為だけにさしているから。
 

「サスケさん、大変、びしょ濡れになってるわ」

 ゆっくりと足を進めながらも、彼の丸い額から雨の雫が滴るのを認めて、錆びちゃうわよ、と声をかければ

「少しくらいなら平気でござる」

と笑顔の返事が返ってくる。

「でも」

「不思議なもので」

 サスケさんは雨の雫が瞳へと流れ入るのも気にせず、穏やかな口調で続ける。

「今は、自分が錆びてしまう事よりも、ヤエ殿が風邪をひいてしまう事の方が心配なのでござるよ」

 傘の縁から、大粒の雫が彼の頭にポチャンと落ちた。
 それが彼の頬を伝って足元へと落ちた時、私は歩みを止めて、彼が振り向くのを待った。

「ヤエ殿?」

 頭部にひやりと冷たいものを感じた瞬間、一歩後ろの私に、彼は問い掛ける。
 私は雨の匂いのする空気を吸い込んでから、何もない空間へと傘をさしたままの彼に、言葉を投げ掛けた。

「ねぇ、愛しい人の事を一番に考えるのは、私も同じなのよ?」

 雨に濡れながら、呆然と傘を掲げる彼に、私はにっこりと笑った。

「雨宿りしましょう」


 二人の一番大切な者の為に。

 






まさかの1時間未満で出来上がった話。解説ないと意味わかんないような話ですが、雰囲気だけでも味わって頂ければ幸いです。はい。^^;

09.6/24

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