ここ

□哀切
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蔵馬の足を左右に開かせようとすると、両足の筋肉が引きつった。
閉じようとする足は、割り込ませた俺の体に阻まれる。
膝の裏に手を回し軽く腰から持ち上げると、もう十分すぎるほど慣らしたそこに、自らのモノをあてがった。
先端が触れると、小さく収縮したのが分かった。

「あ・・・やだ・・っ」

蔵馬が手を動かすと、手首に巻き付けた縄が軋む音が微かに聞こえた。
抵抗を無効にする非情な縄だ。
ふと、手首に傷を付けていないかどうか心配になる。
しかしすぐに、もっと蔵馬の心を傷付けている自分に気付き、苦笑した。


自らを、少しずつ埋め込む。
中は溶けてしまいそうなほど熱く、気持ちが良かった。すぐにでも、達してしまいそうなほどの快感。

「あっ・・・ア・・はっ・・!」

蔵馬の体がビクビクと痙攣した。首を反らしている。
自分がこんなに蔵馬を快楽に溺れさせていることに感動し、興奮した。

ゆっくりと、腰を動かし始める。
蔵馬を気遣ってやるつもりだったのに、あまりの快感に途中から我を忘れてしまっていた。
大して動いてもいないのに、すぐに切迫する。
薬を飲んだ蔵馬より、自分の方が強烈な快感を味わっているような気がした。

「蔵馬・・・!」

蔵馬の中で果てた。
頭の中が真っ白になるような、初めて経験する頂点だった。
今までの中で、最高の。


そして、自分が声を出してしまったことを思い出し、焦る。
思わず蔵馬の名前を呼んでしまった。

気付かれただろうか。

冷や汗が流れる。しかし見たところ、蔵馬に気付いた様子は見られない。
まだ荒い呼吸を繰り返しながら、余韻に浸っている。
大丈夫だ、と、俺は自分に言い聞かせた。バレることは許されない。


蔵馬の方はようやく落ち着いてきたようで、呼吸も元に戻っている。
まだ続けてしまおうかとも思ったが、止めた。
このまま続けたら、俺は蔵馬を手放せなくなってしまう。

蔵馬がそれを望まない限り、俺にそんなことをする資格はないのだ。



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