ここ

□哀切
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「・・・放して下さい・・」

半ば懇願の色を含んだ声色を聞いていたくなくて、俺はその口に自らの唇を重ねた。
視覚が遮られていることで、俺の顔が近付いていたことも気付かなかった蔵馬は、突然唇に触れた感触にビクリと身を震わせた。

柔らかな唇を舌で押し開けると、舌先が蔵馬の歯にぶつかった。
そのまま数を数えるように舌で歯列をゆっくりなぞった後、蔵馬の舌と自らの舌を触れ合わせた。
優しく、ざらついた表面を舐める。

そっと、唇を放した。
怯えて抵抗も忘れているのか、蔵馬は身動きひとつせず大人しくしていた。
俺の下で、ただ全身の筋肉を強張らせている。

再び、唇を重ねる。
しかし今度は、ポケットに潜ませていた薬を飲ませるためだ。
まず自分の口に含んでから、そのまま蔵馬の口内に流し入れる。
驚いた蔵馬が一瞬顔を背けようとしたが、喉仏が上下するのを確認するまでは唇を外さなかった。

「は・・っ・・な・・何を・・・」

何だか分からない液体を飲まされ、蔵馬は不安になったようだ。
大丈夫、死ぬような薬ではない。ただ少し、興奮させてくれるだけだ。
声には出さず、心の中で答える。

痛く、苦しい思いをさせる気はなかった。




「あ・・っ・・ ン、う・・ッ」

俺の舌で愛撫され、先ほどから蔵馬は引っ切り無しに声を上げている。
淫薬の効き目は抜群で、何をされてもすぐに反応した。
細やかな刺激でも十分に反応するので、俺はまるで蔵馬を壊れ物のように優しく扱った。
せめてもの罪滅ぼしのつもりなのかもしれない。


蔵馬の腰がわずかに浮く。達する直前の、無意識的な癖みたいなものがあるらしい。
それを合図に、俺は蔵馬のモノを咥え込んだ。

「ん・・は アっ・・ン・・!」

瞬間、声が少し高くなる。その声を、俺は気に入った。
もっと聞きたいと思う。



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