ここ
□哀切
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信じて欲しい
俺は・・・俺は・・・
――――・・・・
「一体何をする気ですか・・・」
目隠しをされ、両手を縛られ頭の上で固定された状態の蔵馬が、怯えを含んだ声で聞いた。
仰向けになった上に俺がまたがっているから、蔵馬が震えているのが分かる。
完全に俺を怖がっている。
「どうしてこんなことをするんですか・・・。あなたは一体・・・」
誰なんですか
かすれた声は最後まで続かなかった。
尻窄みになってしまった声を聞いて、俺は苦笑してしまった。
まるで泣き声だ。
そう、こいつは俺が誰だか分かっていない。
後ろから薬を嗅がされ、誰だか確認する前に意識を失ったのだ。そして運んで来られたので、ここがどこだかも分かっていない。
気がついたら、身の危険を感じる状況に陥っていたという訳だ。
全くもって、不運だろう。
「何をする気なんですか・・・」
うわごとみたいに、先ほどと同じ質問を繰り返す。
それにしても、俺が全く誰だか分かってないとはいえ、自分をこんな危機に陥れた人間に敬語を使うとは。
いじらしくもあり、痛々しくもあった。
もちろん、蔵馬の質問には答えない。いや、答えられない。
単純な理由だ。ただ、声が出せないのだ。
声を出したら、バレてしまう。
俺たちは、全くの見ず知らずの他人という訳ではなかった。
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