短編

□俺の頑張れる理由
1ページ/5ページ




俺の最愛の人
奈義叉(なぎさ)





最近、たった一人の肉親である姉を無くした奈義叉に

俺は慰めの言葉をかけるハズだった。



でも奈義叉はずっと泣かなかった。

泣くどころか笑ってたんだ。

弱味なんか見せずに、今日も俺んちへ来ては
「今日は何作って欲しい?遠矢(とおや)。」
って俺の名前を読んで夕飯を作ろうとした。


俺はその時、そんな奈義叉に苛立ってたんだ。




どうして俺の前でも弱いとこ見せないんだよ。




「遠矢、この間俺のリゾット喰いたいって言ってたよな?それ作ってやるよ。」

俺と同い年なのに背が高くて、俺より男前でいつも笑ってんだ。こいつ。


「なぁそれでいいだろ?遠矢」


…ムカつく

「あぁなんだっていいよ。」

「何怒ってんだよ、膨れっ面〜。」


奈義叉が俺の前で強がるからだ


「別に…。」

たった一人の肉親である姉を亡くして、なんで笑ってんだこいつ

式の時だって泣いてなかったし

悲しくないのかよ…。



なんで寂しいとか言わねんだよ




「遠矢、もうすぐできるから片付けといて。」


「……。」


なんで弱いとこ隠すんだよ


「ほら、遠矢。」



付き合う前からそうだ

こいつはウザイくらいヘラヘラしてて




友達も、亡くなった姉さんも
こいつの泣くとこ見ないって言ってた




「片付けとけって遠矢ぁ」

「……。」

俺は不機嫌なまま無言で片付けをした




…といっても、その場から動かず放り投げるように物をどかすだけ。


「はぁ…遠矢…。」

呆れてる。

「何怒ってんだって…?」

「別に怒ってねぇよ。」

「……。」


奈義叉は頭かかえてる。

面倒な恋人

とか思ってんだろ…。








俺たちは黙って食事をした。

俺が喰いたいって言ってたリゾット。


今はちっとも嬉しくなんか無い。



「……。」

「……。」



奈義叉は俺に心配して欲しくないのか?


俺は奈義叉の為なら苦なんて無いのに…。




「……なあ、遠矢。」

半分まで食べた辺りで奈義叉が話しかけてきた。


でも俺は返事をしない。


そんな俺に、一度ため息して奈義叉が続けた。




「あんまり…気苦労かけんなよ…。」


「はぁ?」
意味がわからない。
とうとう俺が目障りになったか?


「遠矢、俺だって式の事とかで疲れてるんだ。…遠矢が不機嫌だと落ち着けないだろ?」

なんだよ…




やっと…







「…やっと弱味出したと思ったら、姉さんの事じゃねぇのかよ!俺が悪いのか!?」


「違うだろ遠矢…なんで怒ってるんだよ。」


「お前こそなんで何も言わずにいつもの感じ装ってんだよ!」


「いや、それは…」
「恋人にすら泣きすがんねぇのか!?随分ご立派じゃねぇか…。」

「お、おぃ遠矢…」
「心配してぇんだよ!こっちは!……いつまでも強がってんじゃねぇ!バーカっ!!」

言って俺は部屋をでた。

遠矢!って聞こえたけど振り向かなかった。


一人で泣いてりゃ良いんだ。

……あんなやつ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ