鵺奇譚

□氷上の少女
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さくさくさく。

まだ誰も足跡をつけていない真っ白な道。
少し、水気を増した雪の上を歩く。
まだ雪景色とは言え、水気のあるみぞれ雪は春の訪れを感じさせる。


畑の畦道にさしかかると
ふと、目の端に何かが動いた。

狐だろうか。
何気なく目をやった先には――――女の子がいた。

見知らぬ顔。

この辺の子ではないのだろうか。
都会から遊びに来たのだろうか。
纏う水色のコートが薄物に見える。
氷の上をスケートのように滑って遊んでいた。


目が合うと、彼女は口の端を柔らかに持ち上げて手招いた。


口が「あ」「そ」「ぼ」と開いた。


可愛らしい誘いに、僕は―――――













一目散に逃げた。


彼女の周りには一つの足跡も残っていなかった。
だが、どうやってあの溜池の氷の上まで辿りついたのか、容易に想像がついたからだ。

あの溜池は、春が近くなると子供が落ちるのだ。
きっと彼女に捕まってしまったのだろう。


氷上の少女  了

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