怪力乱神
□環☆秘密の逢引事件
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放課後。掃除を済ませた環は、お気に入りの蝙蝠の羽の着いた鞄を背に階段を走り降りていく。
「おーい、環。そんなに急いで何処行くんだよ」
山田と田中が階段の上から環を呼び止める。
「ここ数日、帰るの早いじゃん。何かあんの?」
「嵌ってるRPGとか?」
柿の種を食べながら、山田は手にしたゲーム雑誌を示す。
「そんなんじゃねーよ。じゃ、俺急ぐから」
ぱっと身を翻すと、環は校門を出て行った。
「最近付き合い悪ぃよなぁ」
「そうだなぁ…。水藻とか何か知らないのかな」
田中がぽそっと呟くと、山田は「それだ」と一つ手を打って、柿の種とゲーム雑誌を握り締めて階段を走り上って行った。
「神宝の様子が怪訝しい?」
生徒会室で書類を製作していた司はキーボードから手を離した。
「そう、何か授業が終わるとさっさと帰っちまうんだよな」
「そう言えば、最近はここにも来てませんね」
未処理の企画書等を山の様に抱えた朱石が口を挟む。
「次の配本の原稿でも描いてるんじゃないんですか?」
「違いますね」
いつの間に入ってきたのか、二年の広報部で、白鳳玉学園高等部生徒会暗部と呼ばれる、不破紗都が立っていた。
白校内で、彼の知らない事は無いと言われるほど個人の裏情報を知っている。入手方法は謎だが。
「この六日間、神宝先輩は真っ直ぐ家に戻っていませんから」
「そうなの?」
「はい。誰かと会っているようですね」
眉一つ動かさず、淡々と喋る紗都の言葉は、好奇心旺盛の山田のハートに火をつけたようだ。
「よし!俺は明日、環の謎を解き明かす!題して、環放課後の謎大作戦だ!」
「大がつくほどの、いや、それ以前に作戦でも何でもないでしょう」
すかさず突っ込む朱石に目もくれず、山田は田中を伴って生徒会室を出て行った。
「神宝に負けず元気な奴だなぁ」
「と言うか、どうしてあの連中は、何か怪訝しいことがあると会長の許に報告に来るんでしょうかね」
「さて」
明日の騒ぎを想像したのか、司は苦笑した。