耳袋〜みみぶくろ〜
□この時期
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看護師の伯母から聞いた話だ。
「7月半ばから8月半ばって忙しいの」
この時期からお盆にかけて、自殺者や長期病に臥せる患者の死が多くなるのだという。
夏場は確かに弱った者には乗り越えるのが難しい季節かもしれないが、それも昔の話。
今は病院といえば空調設備がある。それなのに、この時期からお盆にかけて、やたらとお悔やみ欄が広がってくのだそうだ。
気になって、自分も見てみた。確かに、一面に広がっていたが偶然ということもある。
伯母は病院、介護施設と渡り歩いているのだが、ある夏の夜勤の続いた日。
その施設で風呂を使っていたら、すりガラスの窓を何かが過ぎった。
何だろうと思っていたが、風呂から出れば辺りは騒然としていて。
どうしたのかと同僚に尋ねれば、4階から長期入院をしていた患者が飛び降りたのだとか。
伯母の見た影は、その飛び降りた患者だった。
こんなことが夏の盛りには更なのだという。
だが、お盆が来るとぴたりと止まる。
お悔やみ欄が小さくなる。
地獄の釜が開くくらいだから、死神も長期休み前に一気に仕事してるのかもね。
子どもながらにそんな風に思った。
この時期に成るとふと思い出す。そんな夏の思い出。