耳袋〜みみぶくろ〜
□夢の少女
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怖い夢を見た。
廃墟の暗闇に、少女が一人。
ただそれだけなんだけど。
その笑顔がやたらに怖い。
普段自分は、こういうのはあまり怖がらない性質なのだが、どうにも怖い。
何が怖いのか分からないけど、怖い。
どんどん追い詰められて、手が触れそうなところまで来て目が覚めた。
脂汗びっしょりで、酷く寒かったのを記憶している。
そこまでなら、ただの怖い夢だ。
それから、暫く経って。
暗がりに入ると、少女を思い出すようになった。
シャッターを閉めた会社は明りを消すと真っ暗になる。
その廊下の先に、少女がいた。
眠る際、明りを消した部屋の隅に。
トイレに立った廊下に。
暗い窓の奥に。
少女が立っていた。
厭な笑みを浮かべて。
それ以来、自分は暗闇が怖い。