耳袋〜みみぶくろ〜


□模倣犯
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たまに霊って真似するんだってよ。
絶対、構って欲しいからだよね。

実話の怖い話の漫画を読みながら、そんなことをクラスメートと話してた。

その夜、ふと目が覚めた。
目が暗闇に慣れてくると、カーテン越しに街灯の薄明かりで、部屋がぼんやりと浮かび上がってくる。

ぼんやりとそれを見ていた。
まだ寝ぼけてたのかもしれない。

だけど。

なんとなく、部屋の感じが違う気がした。

何が違うのかな。
目玉だけを動かして、部屋を見る。

気のせいかもしれないけれど、電灯のカサから何か……
紐以外の何かがぶら下がってる気がする。

気がするというか、もう紐さえ見えない。
電灯のカサの形も曖昧な黒に覆われてる。

さっきまで見えていたはずなのに。
何で其処だけ暗いのかな。

そう思ってた。
それが振り向くまでは。


徐にそれはこちらを向いた。
電灯から髪を振り乱した女の首がぶら下がってた。
カサや紐が見えなくなったのは、その髪に覆われたから。

そいつは、こちらを見て厭な笑みを浮かべた。


そいつ、どうしたかって?
闇に融けるみたいに消えてった。

その時はもう笑ってはいなかったけど。
多分、私が「それ雑誌で見た」って言ったからだと思う。

めちゃくちゃ似てたんだ。
その現れ方が。
その日読んでた怖い話の漫画に。

その話をクラスメートに話せば、同じのが出たんだとか。


霊にも流行の出方ってあるのかね。
そんな話をしていた高校生の頃を思い出した。

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