耳袋〜みみぶくろ〜
□寝苦しい背中
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眠りが浅くて、ちょっとした家鳴りで目が覚めたんだと思う。
左下にして横向きに寝ていたのだけど、どうにも寝苦しい。
ちょっと体勢を変えようとして、動いたとき背中に何か触ったんだ。
ベッドの上には読みかけの本や、縫い包みなんかがあったけれど
それとは違う。
固いけれど少し柔らかい何かが背後にあった。
何かあったっけな……
ぼーっとした頭で考えながら、それを退けようとした時。
右の耳に誰かの寝息みたいのが聞こえてきたんだよね。
家族とは部屋が別だし。
ペットも二階の私の部屋には入ってこられない。
何かの音と間違っているんだと思って、よく耳を済ませたら
それは背後から聞こえてきてるんだよね。
連続的に、規則正しく。
夏なのに急に汗が冷たく感じて。
後ろに何かいるって漸く気がついて。
悩んだけど、誰かが助けてくれるわけでもないし。
距離を置くような形で一気に振り向いた。
男が居た。
やつれた男というか、髪とかまだらにしかなくって、病気で抜けちゃったような。
一瞬で消えたけれど。
未だになんだったのか分らない。