耳袋〜みみぶくろ〜
□ぶら下がってる
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深夜、友人の家から帰宅するとき。
どうしてもその橋を通らなくちゃならないんですよね。
そこは自殺の名所。
多い時は、1か月1人の割合で自殺してた年もあったなぁ。
時刻は深夜2時すぎ。
草木も眠る丑三つ時ってやつですよ。
勿論、都会の飲み屋街じゃあるまいし。誰もいない。
でも、車ですしね。
パーッと通っちゃえば大したことないんです。
橋だけが矢鱈に電灯で照らされていて暗闇に浮かび上がるのが、何だか怖い。
だけど帰らないわけにも行かないので、景気のいい音楽をかけながら通過したわけです。
3分の2くらいいったところで、何か左の柵が気になっちゃって。
よく見たら、柵の下のところに何かあるんですよ。
手でした。
両手で柵の外にぶら下がってるって感じ。
ありえないんですよ。
その下、足場なんか何もないし。
大体深夜ですし。人なんて居るわけがない。
すぐに加速して通り過ぎましたけどね。
家に着くと即、布団に潜り込みました。
その次の日、母親と昼間その橋を通ると、昨日の手が握り締めていた柵の辺りに、ビンに1輪の花が挿してありましたね。
まだ、この世にしがみ付いてるんですかね。