耳袋〜みみぶくろ〜


□美術室の廊下に
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美術室の入り口には暗幕みたいなカーテンがあって、出入りはそれを潜って来るわけなんだけど。

夏になるとドアが開きっぱなし。
カーテンは人の腰辺りまでしかないんだよね。

大会用の絵を描きに、夏休み一人で美術室に篭ってたら、なんとなく廊下側がちらちらするんだ。

ちょっと休んで、廊下をじっと見ても何もいない。

それもそのはず。
美術室って端にあるから、前を通っていっても突き当たりは窓があるだけ。

後は何にもない。
それに、今は夏休みでそこにたむろする様な生徒もいない。


気のせいかと思って描き出したら、また目の端っこをゆらゆら何かが見えるんだよね。

何か、腹が立ってきちゃって。
何とか見てやろうって気になったわけだ。

それで、描いてる振りをして、廊下をギリギリの横目で見てた。


すっと何かが通っていった。
何かっていうか、スカート履いた誰か。

ひらひらって紺色のスカートが見えた。
何だ、誰かがいるんだ。
ちょっと拍子抜けして再び絵を描きだして……

「あれ?」

なんか変なんだ。
でも何で変なのか分からなかった。

そのすぐ後に後輩が元気良く美術室に入ってきて、漸く違和感に気がついた。


うちの制服、紺色じゃない。
しかもひらひらするような、プリーツスカートでもない。

思わず自分のスカートを見る。
ひだは3つのボックスプリーツ。
しかも地味なグレー。


古株の先生いわく、数十年前は紺色のセーラー服だったとか。


彼女は私が卒業するまで、何度も見かけた。

足だけね。

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