耳袋〜みみぶくろ〜
□勝手に点く
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「この間、凄い雷鳴った日あっただろ?」
久々に前工場長が来て、突然話し出した。
「突然電気が点いたんだよ。消してもまた点くんだ」
雷のせいかなと思って、点けたままにしておいた。
「そんで雨がやんで、ウチのが猫の餌やりにいったらよ、今度は何か鳴ってるんだと」
工場長の家は二手に分かれていて、もう一軒の家に猫を飼っていた。
奥さんが何かと思って家の戸を開けると、玄関チャイムがずーっと鳴っていたんだという。
勿論、玄関の戸のところに奥さんは立っていて、他には誰も居なかった。
「気持ち悪いだろ? で、呼ばれていったら一旦チャイムが止まったんだ」
だけど餌をやっているうちにまたチャイムが鳴り出した。
「何しても駄目でよ。あんまりにも気持ち悪いから、線を引っこ抜いたら鳴らなくなったんだ」
これも雷のせいかと思ったが、蓋をあけてみるとチャイムは電池で雷とは全く関係がないことに気がついた。
「時折あるんだよなぁ……盆に遅れて息子でも来たかな」
工場長は息子さんを亡くしている。