耳袋〜みみぶくろ〜


□おかむろ
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「おかむろさん」って知ってますか?

結構昔の話になるんだけど。
この話を聞いた人のところには、「おかむろさん」が来る。
そういう話。

ただし、「おかむろさん」に至っては、「土曜日の夜に来る」としか私は聞いてなかったんですよ。
それから、退散させるおまじないの「おかむろおかむろ」ってやつと。

何時だったかなぁ。
これを聞いて2年経ったかなぁ。

金曜日だったので、次の日が休みということもあり遅くまで1人で起きていたんですよ。
寝落ちが怖いのでベッドの上で練る準備万端にして本を読んでた。


案の定、何時の間にか寝落ちていて、1時半に消えるよう枕もとのスタンドにタイマーを掛けていたのだけど、それも消えてた。
まどろみの中で、何と無く風が強いのか音がするなぁって思ってたんですよね。
イメージはゴミステーションの小屋の屋根を、剥がれ掛けたトタンがどんどんどんって叩いてる感じ。

それが、何だか近いなぁって思った。

このときの部屋のベッドの前にはカーテンで仕切りがあって、誰かが通っても見えないけれど影や光だけはカーテンを通しても分かるっていう。
そういう仕様になってたんだけど。

カーテンに街灯の灯りで、他は影なんだけどくっきりと窓の四角が白く映し出されてた。
それが、何だか変な形なんですよね。

遮る物といえば、位置的にコートラックの棒とかフックとか。
それ位なんだけど、窓の四角の中に何だか変な影がある。

でこぼことしていて、丸みを帯びている。
何の影だこれ。

暫くボーっと考えてた。
すると

どんどんどん

ハッとした。
それ、すぐ傍の窓を叩いてる音だって気がついたから。
それで漸く気がついた。

このでこぼこした影。
人が、右手で窓に手をかけて左手でガラスを叩いてる。

そういう形だったんですよね。


で、急に怖くなった。

誰かいる。
窓に鍵かけたっけ?
泥棒? 変質者?
――――だったら何で窓を叩いてるの?


それまでとは違う怖気がぞわぞわぞわって上がってきて、急に身動きできなくなった。
金縛りじゃなくて。
動いたら気づかれてしまうって思った。
分からないけれど、何故かそう思った。

そして、何かこんな怖い話しあったよねって脳をフル稼働させてた。
だけど出てくるのが「かしまさん」。
でも、これは違う。
なんだっけ。なんだっけな!

どんどんどん

ずっと窓を叩いてる音が聞こえて、影も見えるからパニックになっちゃって。
だけどふっと思い出した。
その話をしたとき、友達が「99の岡村思い出すね」って言ってた!!
その瞬間にぱっと脳内に「おかむろさん」って閃いた。

(おかむろおかむろ。おかむろおかむろ)
これが呪文なんだけど。
おかしいってのは良く分かってる。
だけどもう、それに縋るしかなくて目を閉じて何度も何度も唱えた。
どれくらい時間が経ったか解らないくらい唱えていたと思う。
段々と音が遠ざかって、もう聞こえなくなったかなと思って目を開けた。
影はなくなっていて、ただの四角い窓の形だけが映ってた。

この話、忘れたころに来るからタチ悪いよね。

呪文思い出せなかったらどういう事になるのか、私は覚えていないから余計に怖い。

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