耳袋〜みみぶくろ〜


□お父さん
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クラスメイトのお父さんが話してくれた話ですが。

仕事で遠出をしなければいけなかったので、まだ暗い早朝から出発して、ある踏み切りに差し掛かったんですよ。
勿論、「開かずの〜」なんてこともない、何の変哲も無い普通の踏み切り。
 
なのに、開かない。
電車も通らない。
遮断機の故障かと思うくらいに長く足止めされてて。

ふと気づいた。
線路の向こう側に何時の間にか人が立ってるんですよ。

イライラしてたから気がつかなかったのかなって思ったんだそうです。
でも、よく見るとその人は自分の父親なんです。
窓を開けて、「父さん」って叫ぼうとして、ふと思い出したんですよ。

お父さんは病院で寝たきりなんだって。
そう思った瞬間に遮断機が上がったんです。

其処には誰も居なくて。

携帯電話も無かった時代だから、すぐに公衆電話を探して家に電話をしたんですよ。
すると、寝ているはずの奥さんがすぐに電話に出て「お義父さんが危篤だって」って言うんです。

そのまま病院に駆けつけると、まるで待っていたかのように息を引き取ったんだそうです。
 
虫の知らせって言うけれど、本人が知らせにきちゃったよ…
って寂しそうに笑ってました――

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