耳袋〜みみぶくろ〜
□ポスター
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ある人の話です。
何人かで飲んだ帰り、夜も更けたというのに二次会は先輩のうちで宅飲みということになったんですよ。
コンビニでビールやらつまみやらを買い込んで、その先輩の家に行ったんです。
まあ、普通の部屋。
特に広くもなく狭くもなく、テレビにベッド、カラーボックスに漫画本。
壁にグラビアのポスターが貼ってあって、その右上がぺろんと剥がれてたのが少し気になったくらい。
暫く馬鹿話をしながら飲んでいたら、やっぱりそのポスターがちらちら視界に入って気になる。
思い切って貼りなおしてやろうかと思ってよく見たら、そのめくれた部分に何かあるんですよ。
何だろう…と、じーっと見てると、なんて言うか……視点が定まったみたいにそのポスターの裏側から出ているものが見えたんですよね。
手でした。
ぺろんってめくれた所に、人差し指を立てた手があるんですよ。
勿論ポスターの後ろには膨らみも何もない。
壁があるだけ。
壁から生えたというよりは、やっぱりポスターの後ろから出てるって感じ。
きっとこの時、波長ってのが合っちゃったんでしょうね。
なんだこれ……って思っていたら、先輩が「飲めよ」ってビールを勧めてくるから行ったん目を逸らしたんですよ。
でも、気になるからビール飲みながらまた見るんですよ。
指が増えてました。
ピースってしてるみたいに。
えっ? て思うじゃないですか。
怪奇現象なんだろうなって何と無く感じてるんですよ。
だけど、皆もいるし何よりそんなに怖いって思わなくて。
だってピースだし。何をする訳でもないみたいだし。
それで「まぁ、いいか」ってトイレに立ったんです。
でも戻ったら、急に怖くなったんですよ。
その手に目をやると、人差し指と、中指と、薬指が立ってた。
その時分かったんですよ。
この手、ピースしてたんじゃないんだって。
カウントダウンするみたいに数を数えていたんだって。
急激に心臓がドキドキしてきて、何かは分からないけど「ヤバイ」って思って、言い訳もそこそこに鞄引っつかんで帰りました。
その後?
知りません。
先輩、いなくなっちゃったんで――――