別世界の扉 ワンパンマン

□憧憬 
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 それは帰り際のことだった。

駐輪場から初代ジャスティス号に乗って校舎を横切ろうとした、その時。教室で見かけた顔と、派手に学ランの袖を破った二人組みの姿が目に付いた。

「お前ら今いくら持ってんの?」
 威圧するような声が聞こえ、無免はとっさに叫んでいた。

「そこの不良達ちょっと待てーッ」

 威勢よく止めに入ったのはいいが、相手は喧嘩慣れした上級生二人。たかられていた同級生達が加勢してくれる筈もなく、無免はいいだけ殴られ、ジャスティス号も無残に破壊された。

 無免が暴行を受けている間に同級生達はさっさと逃げ、次の日教室で無免が声をかければ、あろうことか迷惑そうな顔で「余計なことすんな」と言われたのだ。

「お前みたいのと知り合いだと思われたら、また先輩に目つけられるだろ。二度と俺らに話しかけんな、かっこつけ偽善者」

 その日から無免は教室で孤立した。

 まだ12歳だった無免には、その理不尽な仕打ちに落胆を覚えずにはいられず、後悔ばかりが頭を埋め尽くした。

 自分は正しいことをしたのに。
 痛い目に遭ってまで助けたのに。
 大切なジャスティス号まで失くしたのに。
 こんな奴らのために!!

「偽善者……」

 ヒーローではなく、ただの偽善者。
 目の前が真っ暗に閉ざされたようだった。



「そんな時だったよ。彼を見かけたのは」
「うん?」

 ずっと空のコップを見つめていた無免が、熱々の大根に息を吹きかけているサイタマに視線を戻す。

 絆創膏塗れの顔に、小さな笑みが浮かぶ。

「放課後、職員室に日誌を届けに行く途中。またあの不良達が1年生に絡んでいたんだ……」
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