耳袋〜みみぶくろ〜


□深夜に躍動する
1ページ/1ページ

深夜1時を過ぎた頃。
2階にある自室に戻ろうと、電気もつけずに階段を上がりきったところで視界に何かが入った。
窓の外で何か光が動いたように思えた。
それは空き地のまだ向こう。距離にして200mくらい先のリサイクル業者の置いたトラックと、木立の陰をチラチラする。
懐中電灯の光にしては少し明るいだろうか。

誰か居るのか?
そう思って静観していると、それはぽーんと跳ねるようにして大きく弧を描いた。

真っ暗なので、何の陰に隠れているのか分からないが、視界から消えたり現れたりと忙しい。
そしてそれは空き地を出て、その前に位置する道――つまり、我が家に繋がる道へと踊り出た。
とはいえ、その道からさらにゆるい坂を上ったところに我が家はある。
私はそれをじっと観察した。

まだ斜め上にいるそれは、弧を描きながら激しく動いている。
最初は人が懐中電灯をつけて歩いていると思っていたのだが、その動くスピードは自転車かと思えた。
だが、自転車のライトがあんな弧を描いて動くことがあるだろうか。
イメージ的に、鹿のような動物が頭にライトを着けて走ったら、あんな動きになる気がした。

結局それは、坂を上がっては来ず、道を真直ぐに進んだのだろうが、反対側に位置する窓から見てもそれは現れなかった。

家族に話してみたが、誰かが走っていたのではと言われたが、それはない。
何故ならば、その道にある街灯の辺りに来たとき、それは何も見えなかったからだ。

人ならば姿がみえて当然。
未だに謎である。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ