♀ツナ
□蜂蜜色の君
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雲雀が綱吉を好きだと自覚したのは、ここ最近ということでもない。
初めは、ちょこまかとする小動物のようだと思い観察するように眺めているうちに、その心根から、気概から、動作から全てを好ましいと感じた時には心の全てを攫われていた。
しかし雲雀は雲雀なので綱吉に自ら進んで近寄ることはできなかった。
精々が遠くから綱吉たちが起こす騒動に綱吉が傷つかないように気がつかれないように守るのが精一杯だった。
そんな中、リボーンから呼ばれた新年会。
もちろん参加するつもりなど露ほどもなかった。が、
「ツナが酒を無理やり飲ませられちまったら・・まずいよな?」
アイツ狙いの男共がここぞとばかりに口説きにかかるかもな?
口端を上げて楽しげに笑うリボーンは、まぁ気が向いたらこいよと言って応接室の窓から出て行った。
「はぁ・・」
店の前で雲雀は重苦しいため息をついた。
ガチャガチャと騒がしい店内。
近づきたくはない、近づきたくはないが・・。
「ふわぁ〜」
と、取っ手に手を伸ばした途端に開かれた扉からは雲雀の想い人ある綱吉がコップを片手に頬をピンクに染めてニコニコと機嫌よく笑い立っていた。
「あり?」
ヒバリしゃんじゃないれしゅか
雲雀の胸元から上目遣いで伸び上がり綱吉は驚いたように目を見開き舌っ足らずに雲雀を呼びながら笑う。
「君・・お酒飲んだの?」
「いいえ、オレおしゃけは、キライれす」
コリはジューシュでしゅよ?
コテンと小首をかしげて飲んでみてくれと差し出されたコップからは確かにアルコールの匂いはしない。
(でも・・この子・・酔ってない?)
でなければ、自分を見ては真っ赤になって逃げ惑うこの子が自分を見てニコニコと笑うなんてありえない。
いつもいつも自分の姿を見ては怯え、力がこもるのか顔を真っ赤にして体を硬直させる。
悲鳴とも言えぬ怪しいうめき声を上げピュと子ねずみのように逃げてしまう。
雲雀がずっと間近で見たいと思っていたリラックスした笑い顔。
それをこんなに簡単に見られて嬉しい反面、やはり様子がおかしいことに疑問が湧く。
そんな思考に陥っている雲雀に綱吉は信じてもらえないと憤ったのか
「オリのジューシュが飲めないんれしゅか?」
さぁ、飲めとコップを強引に握らせる。
雲雀は戸惑いながら一口飲むと
「・・美味しいよ」
「れしょ?」
さぁ、もっと飲んでくらしゃい!
いつの間にやら、もう片方に握られていた小瓶の中身を雲雀の持つコップにドボドボと注ぎ、まずは駆けつけ三杯でしゅと強引に飲ませる。
雲雀に意識があったのはここまでだ。