♀ツナ 

□君色の空
2ページ/8ページ


カツカツと規則正しく刻む靴音が向かう先はボンゴレボスの執務室だ。

(7年ぶり・・)

雲雀が向かう先にはあの日、屋上で別れて以来、会うことのなかった沢田綱吉がいる。


あの日、沢田綱吉が好きだと言い自分は気持ち悪いと答えた。
その次の日、沢田綱吉は並盛から姿を消した。
赤ん坊の話によるとボンゴレの10代目になるのを了承するのにイタリアに向かったとのことだった。

雲雀の手元には雲の証が残されていた。
しかし以来、ボンゴレからの干渉は一切なく雲雀には綱吉に関する何もかもが伝えられることがなかった。

綱吉の周りにいた獄寺、黒曜組は、綱吉と、ともにイタリアに旅立った。
残された山本、了平はそれぞれが自身の夢を叶えた後の合流を約束したらしい。

それは赤ん坊から伝えられた話の中で聞かれたことでもあった。そしてもう一つ

『お前・・ツナに何をした?』
『・・気持ち悪いと言った』
『・・バカなやつ・・』

それは綱吉に向けられた言葉なのか雲雀に向けられた言葉なのかその時にはわからなかった。

(ただ、あの日以来、苛立ちが収まらない。)





案内された部屋には見覚えのある面子が顔を揃えていた。

今では姿を取り戻した元家庭教師。
十代目の右腕としての自信と矜持を身につけた獄寺。
愛想をよくふるまいながらも瞳には油断ない光が宿る山本。
そして煌びやかな洗練された青年に成長した骸。

「久しぶりだな」
「やあ、元気そうだね」

お気に入りの元赤ん坊に声をかけられながらも意識は綱吉の気配を探る。

「とりあえずそこに座れ」

指し示された来客用のソファに腰を下ろすとリボーンは早速だがと話を始めた。



綱吉が正式に10代目を継承するにあたり守護者を揃え披露目する。
それが今回、雲雀を呼び出した理由だった。

「・・・」

「8年前、お前はリングを持っていれば強い奴らと闘えるとリングの所持を承諾した」

だが今は並盛にマフィア関連の者が集まることはなく意味をなさなくなったはずだ。


「そのためにリングの返却をしろと?」
「その通りだ」

雲雀は胡乱げに周囲を見回すとお断りだと告げた。

「それは勝手な言い分だね」
「だがお前には守護者であり続けるという理由はないだろう?」

お前には。

そう告げるリボーンに雲雀の秀麗な右まゆは器用に上がる。

「・・そうだね」
「それとも守護者でいたいのか?」

ニヤニヤと笑うリボーンに雲雀は薄く笑う。

「・・そちらの言いなりはつまらないな」

力づくで奪い返してみたら?

そういって見せつけるように雲雀は指輪のはめられた右手を顔の前にかざした。

「それに、わざわざ僕を呼んだにしてはトップが顔を見せないなんて気に入らないな」
「・・ツナか?」

クスリと口の端を上げたリボーンにムカつくものを覚えるがコクりと頷き暗に呼べと告げる。

リボーンが振り向き獄寺は頷き奥の扉から出て行った。



待つ間にこの7年に関しての話を山本がつらつらと話をするのを聞くとはなしに聞いていると扉が開かれ金色の眩しい光が差し込んだ気がした。


「こっちに来い」

リボーンの呼びかけにあの頃と変わらない姿の少年が駆け寄る。

もうとっくに20歳を超えたはずなのにあの頃と変わらない少年。
いや、あの頃よりも華奢で線が細い気がした。
着ているスーツはぴったりとした高級品であるはずなのに彼に全くに合っていない。
スーツの下に隠れた見えずともわかる腰の細さや肩の華奢さが洗練された美しさとともに雲雀を、にわかに落ち着かない気分にさせる。

そんな少年がリボーンに駆け寄ると差し出された手を握りその隣に腰を下ろした。

そして甘やかにリボーンに微笑んだあと、その瞳を雲雀に向けた。

「お久しぶりです」

琥珀の両眼が雲雀を見つめる。
その瞳には感情がない。
あの頃、雲雀を見る彼の瞳にあった熱という名の感情は一切ない。

そうして幾分、呆然としている雲雀を置き去りにリボーンは綱吉を引き寄せその柔そうな頬にキスを落とすと改めて雲雀に薄笑いを浮かべた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ