MSA
□次回お楽しみに
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side‐雲雀
(また群れてる・・)
廊下を歩く三人組に雲雀は眉を寄せる。
見知った、見慣れた光景。
(面白くない)
そう感じるようになったのは、いつからか?
ふと長身の短髪がこちらに気づいたようにチラと視線を寄越した。
ニッと意地の悪い笑みを浮かべたかと思うと
「ツ〜ナ♪」
「うわっ、なんだよ山本!?」
急に後から抱き着き、まるで自分に見せ付けるようにする男にカッと頭に血が上った。
「テメェ!十代目から離れろ!」
「ん?お前もやりたいのか?」
「バ、バッカ野郎!」
「ンギャ」
ぎゅうぎゅうに抱き着かれた綱吉は苦しいと訴えるが、やいのやいのと騒ぐ二人の耳には入らない。
「・・廊下で何騒いでるの」
「ヒ、ヒバリさん!!」
綱吉が雲雀の姿を認めその瞳に恐怖の色を乗せると雲雀は秀麗な顔を顰める。
(ほんとに面白くない)
自分には怯えた顔ばかり見せる。
自分には恐怖しか感じてくれない。
自分には・・自分には・・
(きっと・・嫌われてる)
「・・ヒバリさん?」
名前を呼ばれ俯いていたことに気付く。
あの子に嫌われてる、そう考えただけで気持ちが落ち込んでしまった。
「ど、どうかしましたか?」
具合悪いんじゃないですか?
いつの間にか傍まで寄ってきて、そうっと伸ばされた小さな手が僕のおでこに伸びてきた。
前髪を避けて触れてくる小さな手が意外に冷たいことを知った。
「ん〜・・熱はないみた・・い?」
伸び上がっておでこばかり見ていたこの子は僕と目が合うとこんなに密着していたのに今気が付いたとばかりにオタオタとし始めた。
「す、すいません!」
「・・別に」
慌てて離れていく小さな手が寂しいと感じた。
「次に騒いだら・・咬み殺すよ」
「は、はい!」
クルリと背を向け歩き出す背中に二つの強い視線を感じる。
訝しむような、強い嫉妬のような視線。
(あの子が好きなんだね)
「行こうぜ、ツナ」
「遅れます、急ぎましょう」
「あっ、そうだね」
もう一つ背に感じていたのは柔らかな視線。
(僕を見て君は何を思っていたの?)
そんな問いかけは決してできないけど。
君の熱を知ったその日、僕は自分の中に生まれた感情を知ったのかもしれない。