素晴らしき宝物

□Borage
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ランボを奈々に預けた綱吉は恐る恐る部屋に戻った。



「あの…さっきはす、すみませんでした…」



仁王立ちで待ちかまえていた雲雀は綱吉を上から下へと眺めて。



「君…汚いよ」



雲雀が指すのは綱吉のパジャマ。
それはランボの涙と鼻水で汚れていた。



(通りで湿っぽいと思った…)



着替えようと綱吉はパジャマのボタンを外す。



「ヒバリさん?」




濡れた上着を脱ぐと、すぐそばで雲雀が綱吉を見下ろしていた。


雲雀は綱吉の、ある一点を凝視しているように見えた。



「さわだ、つなよし…」



かすれた声で雲雀が綱吉の名を呼ぶ。
それに一瞬、ドキリとするが綱吉を見る雲雀の瞳はなんだか怖くて。

自分に向かってのばされる手に綱吉は体を揺らした。



「チャオっす」

「いっでぇ!!」



雲雀の手が綱吉に触れるよりも早く、いつもの挨拶と共に蹴りが横っ面に飛んできて。



「赤ん坊…」



いったい、今までどこに行っていたのか。
突然現れたリボーンは蹴りによって転倒した綱吉の上に立っていた。



「毎晩毎晩、ご苦労なこった」

「君と戦いたいからね」



そんなに熱望されているリボーンが綱吉には正直うらやましい。



(ま、オレじゃ戦えないけどさ)



雲雀が綱吉と戦いたいとを思うわけがないし、戦ったら瞬殺に決まっている。

きっと、雲雀は綱吉を“つまらない”と思うだろう。
雲雀に、好きな人にそんなふうに思われたくない。
なら、今のままの方が少しはマシだ。
――本当はリボーンのおまけのように見られるのは嫌だけれど。



「そうか……なら、戦ってやる。ただし、もうここへは来るな」



いつもはのらりくらりとかわすのに珍しいと綱吉は思った。
けれど、その条件は綱吉にとってよろしくない。

リボーンと戦ったら雲雀は満足してしまう。
そうなったら、もうこうやって逢えない。




そんなの嫌だ。




そんな事あるわけがないと思いつつ、綱吉は雲雀がうなずかない事を願った。



「……帰る」

「え…?」

「お、いーのか?」



雲雀はリボーンに答える事なく窓から出ていった。


なんで?どうして?が綱吉の頭の中をめぐる。


雲雀はあんなにリボーンと戦いたがってたのに。
リボーンがそれを提案したのに。



「それくらいわかれ、ダメツナがっ」

「あでっ!?」

「ったく、毎晩毎晩くだらねー事に付き合わせやがって」

「ちょ、リボーン!どういう事だよ!?」



いつの間にかパジャマに着替えたリボーンは定位置のハンモックに寝転がると、すでに鼻ちょうちんをふくらませていた。


「リボーンってば!」



結局、リボーンは何も答えてくれなかった。
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