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□はっぴぃ ばれんたいん
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「いってぇ!」
リボーンの鋭いケリが綱吉の後頭部に綺麗に決まると華麗に着地を決めてうるせぇんだよと睨む。
「朝からブツブツと何を騒いでやがる」
涙目で蹴られた頭を擦り唸る綱吉はべ、別になんでもないとオタオタと顔を赤く染めて、ほんとなんでもないんだよと顔の前で手を振る。が、そんなものは先生の前で通用するわけもなく、さぁ吐きやがれと愛用の銃がチャキリと向けられた。
「あっ、あのね、もうすぐバレンタインだから」
真っ赤な顔でモジモジと話す綱吉に寄ればこういうことだ。
綱吉が雲雀に恋心を意識したのは唐突なことではない。
それまでもカッコいいとかステキだなとかの仄かな思いは抱いていたが黒曜戦で胸がドキっとし、10年後では大人な雲雀に目も合わせていられないほど胸が高まり、この度の戦いで自覚してしまった。
雲雀恭弥に恋をした。
「もうすぐ卒業だからさ」
多分、雲雀も並中から卒業していくであろう。
だから今回が最初で最後のチャンスだと思うんだと力説する綱吉に先生はウンウンと頷いた。
(なんかおもしろいことになりそうだ)
「獄寺君が言ってたんだ」
バレンタインにチョコを贈るのは日本の習慣で外国はチョコとかじゃないって。それに男女関係ないって。だからオレ、ヒバリさんにバレンタインに贈りたいんだ。
綱吉の気持ちは当然知っていたリボーン先生だがこれにはとても驚いた。
自分から積極的に動こうとする綱吉なんて初めてだなと嬉しく感じたのだ。
「でもヒバリさんに何をあげたらいいか分からない」
シュンと項垂れる綱吉はちゃんと話をしたこともないし、ヒバリさんとの付き合いはボンゴレ絡みでオレなんて認識されているのかもわからないし・・と小さく呟いていたがキッと顔を上げると
「だから草壁さんに張り付いて探ってみようと思って!」
「・・は?」
間抜けな顔で問い返す先生に綱吉は続けた。
あのね、ヒバリさんの好きなものを探りたいけどヒバリさん本人はダメ。
群れるの嫌いだし近づけない。
でもヒバリさんに一番近い草壁さんならヒバリさんの好みとか知ってるでしょ?
だけど10年後の草壁さんならともかく今の草壁さんだとオレは怖いからこっそり後をつけて観察する。
していれば絶対ヒバリさんの好みがわかると思うんだよ?どう思う?と真剣な目を向ける綱吉に
「いいんじゃねぇか」
お前にしては頑張った。
ナイスアイディアだぞ、ツナと褒めながら先生は後ろ手に回した両手で自分のお尻を摘みあげ笑いを必死にこらえていた。
パァっと満面の笑みを浮かべ、だよね?と自分の想い付きにウンウンと頷くと外から獄寺の自分を呼ぶ声がした。
「じゃ、学校に行ってくるね」
行ってきますとカバンを抱えて部屋を飛び出す綱吉は見ることが出来なかった。
世にも珍しい声を立てずに転げまわって笑うリボーン先生という珍しい光景を。