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□Buon natale!
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恋人になって初めて迎えられると思ったクリスマス。
なのにオレはなんでこんなとこで泣いてるのかな?
神様・・オレそんなに悪い子でしたか?
−−−−――――−ー
『ゴメン、一緒に帰れない』
パタンと携帯を閉じてハァとため息をつくと
(・・またか)
と思い机に俯せた。
12月に入ってからヒバリさんと帰れない日々が続いていた。
非常に忙しいらしくて、いつもなら仕事が終わるまで応接室で待っていて送っていくからと言ってくれるのに、それすら無理なようだ。
「はぁ〜」
ん?どうした?と前の席の山本が振り返り顔を覗き込むので、また一緒に帰れないと言うと眉をしかめてヒバリのヤツ忙しいんだなぁと慰めてくれた。
一人で帰る道すがら本屋でゲーム雑誌でも買っていこうと思いつき商店街に足を向けると煌めくような銀髪が目に入った。
(獄寺君だ!)
どうやら待ち合わせらしくしきりに腕時計を眺めている。
声をかけるのを躊躇っていると
「おせぇぞ!」
と獄寺君の苛立つような声が遠くからでも聞こえた。
獄寺君に近づくその人は・・・
(ヒバリさん?)
オレとは時間が取れないと言っていたヒバリさんだった・・。
二人が連れ立って歩いていくのをオレはただ黙って立ち尽くしていた。
−−――――−−−−
電話もメールもなく朝の風紀活動中に挨拶をするくらいでほとんど接触のなくなってしまったヒバリさんだけど会えば笑って
「綱吉」
と頭を撫でてくれる。
その手を信じていたくてあの日のことを何も誰にも言えなかった。
「今日は一緒に帰れますか?」
期待を込めてすがるように聞けば眉を顰めて
「ごめんね。今日も無理そうだ」
と言われ泣きそうになり下を向いてぐっと涙をこらえた。
綱吉?と心配そうに聞くヒバリさんになんとか笑顔をつくりお仕事頑張ってくださいね。と言ってその場を後にした。
「ツナ〜一緒に帰ろうぜ」
終業式が終わり今日は山本も部活がないらしく一緒に帰ろうと誘われた。
朝、一緒にいたのだからヒバリさんと帰れないことを知って声をかけてくれた山本にありがとうとお礼を言う。
いつものように頭をクシャリと交ぜられてゲーセンでも寄って行こうぜとニカリと笑われうんと一つ頷いた。
職員室に呼ばれていた獄寺君を待って帰ろうと誘えば申し訳なさそうにシャマルのやつに呼ばれていてと頭を下げられた。
「本当にすいません、十代目」
「いいんだよ。んじゃまたね」
獄寺君と昇降口で別れて山本と二人ゲーセンに向かった。
――――−−−−−−
「やっぱり山本はすごいね」
興奮したように話すオレに笑って楽しかったなと言う山本が急に慌てたようにもう一度店に戻ろうと腕を引っ張る。
どうしたんだろうと先程の山本の視線を追えばそこには、あの日のようにヒバリさんと獄寺君が二人で歩いていた。
硬直したように動けないオレに山本はツナ・・と声をかけた。
「・・・前も見た。あの二人付き合ってるんだろうね。オレになんで言ってくれないのかな?」
山本の目が怒りに燃え周囲の温度が下がった気がした。
「・・いいんだ。オレなんかがヒバリさんと付き合えたことが奇跡だったんだよ。獄寺君とならお似合いだもんね」
(オレうまく笑えてる?)
泣き出しそうな山本なんて初めてみたよ、と言えば苦笑して帰るかと言うので大きく頷いて二人無言で家路についた。