♀ツナ 

□どうして僕は
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雲雀がツナと付き合うのは自分にとってメリットがあるからだ。

真っ赤な顔で告白してきたツナに

「別にいいけど僕のすることに口を挟んだり、煩わしい真似をしたらすぐ別れるから」

そう傲慢に答えた。
ツナはそれでも嬉しそうに何度も何度もコクコクと頷き涙を流した。


高校以来二人はそうやって時を重ねた。
ツナは雲雀の宣言に沿って雲雀のやることに口を出すことはなかった。

雲雀は自分にとってメリットさえあれば、女に自分を与えることを厭わなかった。
つまりツナもそれと同様ということだった。

雲雀にとってのツナは自分と同等に戦える珍しい存在。
そして役に立つ女。
それだけだった。



「こんにちは〜」
「・・あぁ来たの」

ニコニコと笑いながら雲雀の執務室であるドアを開くと雲雀は眉間に皺を寄せあからさまに迷惑そうな顔をした。
見れば雲雀はこれから出かけるところであるようであった。
確か今日は自分と此処でお茶してくれるはずであったがと内心ツナは首を傾げる。

雲雀はキュッとネクタイを結び上げると鏡を覗き込み軽く髪を整えながら

「悪いけど今日は別に用ができてね」

振り向きもせずに言い放った。
ツナは一瞬だけ傷ついた顔をしたがニコリと笑うと

「わかりました、またの機会に」

と静かに扉を閉めた。
雲雀は鏡越しにその様子を見ながら口端を上げて鼻で笑う。

(本当に都合が良い)



ツナは誰にも見られないところまで歩いていくとしゃがみこんで泣き声を殺した。
先ほど雲雀の執務室に向かう前に聞いた噂話が耳に蘇る。


『聞いたか、委員長が結婚するらしい』
『あぁ、なんでも某財閥のご令嬢だそうだ』
『これで風紀財団はますます大きくなるな』


ツナは雲雀に真意を確かめようと思っていた。
だが雲雀を見た時におそらくそれは事実であろうと気づいていた。
もちろん、自分が彼にとって数多いる恋人の一人であることは分かっていた。
自分を都合良く利用していることも、ちゃんと分かっていた。

大層なことを望んでいたわけじゃない。
ただ側にいたかったのだ。
・・好きだったから。

だから彼がたまに見せる笑顔でこの噂を否定してくれることを祈った。
だがそれは、あっさりと打ち砕かれてしまった。


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