♀ツナ
□にゃんここにゃんここにゃにゃんこ
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小さな小さな紅葉のような掌を僕に向けてゆっくりと開いていく。
母親譲りの大きな瞳はキラキラと輝きその全てを見透かすように透明でまた美しい。
震える手を叱咤してそっとその小さな手に人差し指で触れると驚く程の強さでギュッと僕の指を握りニッコリと愛らしく微笑んだ。
その瞬間に体中を駆け巡るのは歓喜と泣きたくなるくらいの切なさ。
(・・・ああ、僕は君のためなら死をも厭わないよ・・)
本気でそう思うくらいにこの小さな存在に心を奪われてしまった。
僕の歩く道には誰もいない。
人を人と思えずに側に寄せることもない。
そんな僕が魂の半身とも言える彼女に出会いそして恋をした。
そして、今日、この日、僕は・・・
「初めまして・・パパだよ・・」
「・・・って何言ってるの」
振り返れば鬼がいた。
「やぁ、元気そうですね」
「・・・いいからその子を離して」
この場で争うことはさすがに憚られ惜しみつつそっと指を引き抜くとキョトンとした瞳で僕を見たあとにパチパチと瞬きを繰り返した。
まだ言葉を話せない君の”またね”の挨拶のようで嬉しくなりニッコリと笑い胸の内で同じくまたねと返事をした。
「あれ?帰ってたんですか??」
隣の部屋で仕事をしていたツナが騒ぎに気がついて扉を開けると、生まれたばかりの我が子をどこか危なげな手つきであやす新米パパがいた。
「ただいま」
「おかえりなさい、ヒバリさん」
娘を腕に抱きながら最愛の妻を引き寄せそのやわらかな髪に唇を落とし微笑む姿はとても泣く子も黙る風紀委員長とは思えない。
「骸?来てたんだ??」
声かけてくれれば良かったのにと、彼の人の腕の中、ホニャリと笑う君は出会った頃よりも数倍、愛らしく又、とても幸せそうで・・。
僕のものにはならなかったけれども、それでも僕はこの幸せを、幸福を君のために、いや君たちのために、何よりも僕自身のために守っていこうと密かに誓うのだ。
「・・・可愛い我が子に会いに来たのですよ」
「・・咬み殺す・・」
ここじゃなんだからと外に誘う新米パパについてドアに向かう背に振り返ればキャラキャラと笑う似たもの母子。
「パパいってらっしゃ〜い、骸またおいでね!」
尋常じゃない争う騒音を子守唄代わりに愛される幼子は今日もまどろむ。