SSA

□閉じられた世界で
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「群れるな」
「ふぎゃ!」

トンファーで一撃された後、首根っこを掴んで引きずられていく綱吉は、山本と獄寺の二人に苦笑いで手を振った。


「ツナと雲雀って・・付き合ってるんだよな?」
「・・なんだよ、今更」

首を捻って考え込み手を振る山本に獄寺は呆れた視線を投げる。

「だってよ・・」

今お前も見たろ?と言わんばかりの山本に深く息を吐いて獄寺は零す。

「お前・・雲雀だぞ?」

人前で何かすると思うか?アイツが?

心配げに物憂い山本の様子に大きく溜息をついて獄寺は続けた。

「・・心配いらねぇよ」

十代目は愛されてる。
それはもう深く、深く。

獄寺の脳裏にいつか見た二人の様子が思い出された。



−−−−−−−−−−

「十代目お待たせしました!」

保健室に呼び出された獄寺を待つと言う綱吉に慌てて用を済ませて教室に戻ればカバンはあるが姿が見えない。
ふと応接室に足を向けたのはただの思い付き。
が、後程この思い付きが後悔と安堵という複雑な二律背反な感情を持つことになるとは獄寺も思いも寄らないことであった。

応接室に近づくと綱吉の声が細々と聞こえ声をかけるべく獄寺はドアに手を伸ばす。

「・・綱吉」

それは雲雀が出したとは思えないほど満ち足りた声。
薄っすらと開いたドアから隙間を伺うように中を覗き見ると、いつも雲雀が座っているだろう大きな背もたれの椅子にゆったりと綱吉が座りその膝に縋るように雲雀が蹲っていた。
綱吉のほっそりとした腰にその両腕を回し見上げる視線。

「・・綱吉」

酷く穏やかな、それでいて甘い声音。

(アイツ・・)

獄寺は胸を抉られるような心地にさせられた。
雲雀みたいな奴がこんな感情を顕にするのか?と驚くほどにその声は愛情にあふれた優しい声だった。


「・・ヒバリさん」

小さな手が雲雀の黒々とした髪を梳き何度も名を呼んだ。
安心させるかのように何度も何度も。
その手つきも声もふんだんに愛を感じさせるものだった。


(・・恋してるんだな)

ストンと胸にその言葉がハマる。

静まり返って二人しか、二人の声しか響かない空間。
それは他者を必要としていない二人だけの世界。

獄寺はそっとその場を離れた。



−−−−−−−−−−

「俺もいつかあんな風に・・」

廊下を曲がる二人を見ながら獄寺は胸の内で思う。

(あんな深く人を愛することが出来るだろうか?)

「何か言ったか?」
「・・なんでもねぇよ」

おら、行くぞ!と山本をどやしつけ獄寺は教室に足を向けた。
 

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