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□恋してるんだ↑雲雀サイド
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どうしようもなく苛々とする。
それはいくら群れを咬み殺しても収まらずに僕をイラつかせる。
苛々、苛々、苛々する。
応接室から校庭を眺めれば群れの中心には蜂蜜色の君がいてはにかんだ様に僕には見せない笑みを浮かべている。
何がおかしいのかクスクスとした笑い声さえ聞こえてきそうだ。
胸がギリっと音を立てそうなくらい痛んだ。
君が視界に入るたびに、その髪が揺れる度に、瞳が笑む度に、それがひどく愛おしいものだと気付いた。
認めてしまえば手に入れたくなる。
その髪に触れ瞳に僕を写しその笑みを独り占めしたくなる。
だけどそんなもの無理だ。
君は僕を見るたびに怯え悲鳴を上げては逃げる。
そして僕は苛々として咬み殺して・・。
毎日を不毛なままに過ごしていた。
−−−−−−−−−
いつの頃からか君が僕をこっそりと見つめていることに気が付いた。
とはいえ、目が合えば逸らされるか怯えられるかが落ちなので気が付かないふりをしているが。
(なんなの?いったい?)
しかし僕を見てくれるのは非常に気分がいい。
嬉しい。そう嬉しいんだ。
理科室のベランダにサボリに来ている君に気が付いたのは最初からだった。
でもその存在が心地いいものだったから授業をサボることも見逃していた。
そしてあの日、君に接触を図ろうと横になる君に逃げられないように跨り声をかけたんだ。
「・・ワォ、サボリかい?」
ジッと僕を見つめる瞳が嬉しくてこちらもジッと見つめると跳ねるように逃げ出そうとする。
その君についなぜ自分を見ているのかと問えばオタオタとしながら言い訳を始める。
(・・ワォ!この子・・)
自分は決して恋愛ごとに疎いわけではない。
女の子にはモテるほうだと自負している。
実際自分に恋焦がれる女の子からその想いの告白を受けたり、また自分を見てはきゃあきゃあと頬を染める女達の姿だって見知っているのだ。
(夢じゃないよね?・・でもこの子、憧れなんて言葉でごまかそうとしている・・というか気が付いてないんだね?)
「・・もっと意識して僕を見な」
「・・意識して・・」
そうして僕は気付かせるべく手を出した。
(なんて甘いの・・。甘噛み程度で終わらせたくないけど)
やっぱり君が気が付いて僕の手の中に自分で堕ちてきてほしいから。
今日はこのあたりにしておこう。
「またね。沢田綱吉」
−−−−−−−−−−
「オレ、あなたに恋しちゃったんだ」
堕ちてきた愛しい子に一つ口づけして
「僕も君に恋してるよ」
花が咲きこぼれるような笑顔の君を抱きしめ
「大事に大切に愛してあげる」
堕ちてきた愛しい子。
奇跡のような出来事に 二人で笑いキスをした。