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□恋しちゃったんだ
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あい変わらず授業はさっぱり理解できず、かといって意識を飛ばすほどでもなく、綱吉はなんとなく窓の外に意識を向けた。
(あっ、ヒバリさんだ・・)
校庭を悠々と歩くのは並中の風紀委員長である雲雀恭弥その人であった。
授業中にも関わらずズルズルと両手に咬み殺したであろう生徒を引きずって校庭を歩いていく雲雀に綱吉は目を離すことが出来なかった。
(すごいなぁ。あんなに大きな人二人も引きずってるよ。オレなんて一人だって無理!)
綱吉は雲雀が見えなくなるまで見つめるとフゥと一つため息をつき先程の雲雀の姿を思い浮かべた。
(いつ見てもカッコいいよな・・同じ中学生とはとても思えないよ・・)
誰にも言ったことはないが密かに雲雀に憧れている綱吉であった。
(ヒバリさんがオレの守護者ならボスになるのも悪くないかもなぁ・・)
昼休みに入り弁当を持って綱吉は特別棟の3階にある理科室のベランダに出た。
ここは下が応接室にあたるため不良も(もちろん生徒も)近づかない穴場なのであった。
普段は獄寺と山本と3人で昼食を取るのだが今日は一人になりたかった。
そういう気分だったのだ。
不思議な赤ん坊であるリボーンが来て以来、学校では友達ができ家には同居人が居て毎日騒がしい日々を送る綱吉は時々一人になるためにこの場所に来るのであった。
(友達も家族みたいな同居人も嬉しいんだけどね)
早々に弁当を食べると横になって目を閉じた。
(このまま寝ちゃうかな・・)
「・・ワォ!サボリかい?」
ハッと閉じた目を開けるとそこには雲雀が綱吉を跨いで上から覗き込んでいた。
「ヒ、ヒバリさん!」
(か、顔が近いよ・・)
こんなに顔を近くで見るのは初めてだ。
(なんて綺麗な・・人なんだろう)
互いに無言でしばらく見詰め合うとハッとしたように綱吉は謝罪の意を述べた。
「す、すいません。今から授業に行きます・・」
「・・君、最近よく僕を見てるね?」
(気が付かれてた!)
サッと血の気が引いた。当然咬み殺されるであろうことを覚悟してギュッと目を閉じた。
「なんで?」
いつまでも来るはずの痛みがなく問いかけに目を開けば口角を上げた珍しい表情をした雲雀がいた。
「あっあの・・その・・」
つっかえながらもその強さに生き方に憧れていてと小さな声で告げると
「ふーん。そうなんだ」
ジッとまた自分を見つめるその漆黒の瞳にドキドキと心臓がうるさいくらいだ。
雲雀は身軽く綱吉の上からどき壁に寄り掛かると腕を組んでまた綱吉を見つめた。
綱吉は素早く起き上がると弁当箱をつかみこの場を後にしようと失礼しますと雲雀の前を通り抜けようとした。
その瞬間、腕を取られ抱きしめられた。
(んなっ、何事?)
混乱する綱吉の耳元に雲雀は
「・・ねぇ、憧れてるだけ?本当に?」
ぞくっとするような痺れが頭のてっぺんから脳髄を通り全身を駆ける。
「・・もっと意識して僕を見な」
「・・意識して・・」
そうと言ってニコリと笑う雲雀に綱吉は頭がクラクラとした。
カプっと耳を食む雲雀に
「ゃあ〜」
瞬間自分から出たとは思えない甘い声が出て綱吉は戸惑い雲雀はクッと小さく笑った。
「・・可愛い」
そう言いながら続けて首筋や耳の裏を舐めたりキスしたりと好き勝手にする雲雀に綱吉は
「う・・ん」
我慢できずにまたもや甘い声が上がり綱吉は戸惑い混乱した。
「これで嫌でも僕を意識するね」
抱きとめていた体を離され綱吉はズルズルと座り込んでしまった。
「またね。沢田綱吉」
雲雀は最後に耳元でそう囁くとクルリと身を翻しベランダを後にした。
(な、なんなんだよ)
心臓はもはやありえないくらいに早鐘を打ち全身は火が噴きそうなくらい熱い。
『・・もっと意識して僕を見な』
先程まで綱吉を翻弄した雲雀の唇が当たったところを辿りそこが火傷しそうなくらい熱いことを知った。
「・・本当に・・なんなんだよ・・」
小さく呟き熱い頬を冷ますように何度も深呼吸を繰り返した。
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