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□桃色LIP
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「ダメツナ、唇切れてるじゃない」
同級生の沢田綱吉、通称ダメツナは、えっ?本当?と言って唇にその男の子にしては細く白い指先を充てた。
「ツナ君ほら鏡貸してあげる」
京子が自分のポケットから手鏡を出して渡すと礼を言って慌てたように鏡を覗き込む。
「あっ、本当だ」
小さくであるが中ほどが少し切れうっすらと血が滲んでいるのをペロっと舌で舐めて唇を尖らせた。
「リップクリームつけた方がいいんじゃない?」
購買においてあったと教えてあげると
「持ってるんだけど・・おかしいな?」
とポケットやらカバンやら漁り、ないなぁ?と呟く。
京子と二人黙って見つめていると
「あっ!ヒバリさんに渡したんだった!」
そうだ、さっき応接室に行ったときにだとブツブツと呟くダメツナに私と京子は目を見合わせて
((はっ?今、なんておっしゃいました?))
と心の中で同じことをきっと思った。
口元がウズウズとしてきて京子を見れば同じようにウズウズしている。
(もう少し・・突っ込んでみる?)
(OK!)
「唇が荒れてると色々つらいよねぇ〜」
「うん。喋るときもだけど・・キスとかもさ」
と言うとブツブツ呟いていたダメツナも
一つため息をつき
「そうだよね。チクチクした感じでお互いに気持ち良くないよ」
だからリップクリーム塗ってって頼んでるのになかなか塗らないんだから等と少し頬を染めてプンプンという効果音が出てきそう。
「・・ツナ君、キスって誰と?」
とさり気なさを装いつつにやつく口元を抑えきれていない京子が問うと
「あぁ、そんなのヒバ・・「綱吉!」」
教室の戸口にリップクリーム片手にダメツナを呼ぶ並中の凶悪な王様が立っていた。
ヒバリさん持ってきてくれたんですか?とトテトテと走り寄るダメツナの背中を京子と二人
「・・ちょっと奥さん聞きました?」
「・・えぇ。しっかりと!」
−−−あの二人・・・きゃぁぁ(はぁと)
並中の平和な昼下がり