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□ツタエテココロ
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「あっ可愛い〜」
窓の外から女生徒の甲高い声が聞こえ書類に向かっていた意識がふと途切れた。
視線を開け放ってある窓に向けると黄色の鳥が空を旋回していた。
雲雀に懐く黄色の鳥はパタパタっと応接室横の欅の枝止まるとジッと声をあげた女生徒達を見つめているようだ。
「可愛いけどさぁあの鳥、雲雀さんのらしいよ・・」
「そうなの?」
「で群れたりしてると報告したりするんだって」
ゲッマジ?最悪だね〜怖い〜ってか今も報告されたら…
キャアーと叫び声とバタバタと立ち去る足音が遠くなってから柔らかなソファより腰をあげ開け放ってある窓に近づいた。
「・・おいで」
右手の人差し指を差し出せばチチッと嬉しそうに鳴いて止まる。
『ヒバリサンコワイ』
『サイアク』
先程の女生徒の口まねをしているのであろう本当に頭のいい鳥だ。
左手で頭をなでてやれば気持ちよさそうにチチッと鳴いた。
自分がどんな存在かなんて今更考えるまでもない。
最悪 怖い・・・
『ヒバリヒバリ』
指から飛び立ち僕の周りをクルクル回ってから肩に止まり頭を頬に擦り寄せてきた。
「君は可愛いね」
柔らかな頭を突くとコテっと頭を傾け
『ヒバリサン、ステキダヨネ』
「えっ?」
『カッコイイヨネ』
『ツヨイシヤサシイヨネ』
『オレヒバリサンガダイスキダ』
『イツモイッショニイタイナ・・イツデモダキシメテホシイ』
顔に熱が集まるのが自分でもわかる。
右手で口を覆い自然と浮かぶ笑みを押さえ込む。
「・・沢田」
こんなことを何処で話をしていたの?
こんなに・・嬉しくて彼を愛おしく幸せを感じるなんて
「僕も末期だね」
人差し指をもう一度差し出すとチョンと止まる鳥に口を寄せ囁き窓から飛ばす。
頭のいいあの鳥はきちんと沢田の元に飛んで行くだろう。
「早く連れてきてね・・」
『キミヲダキシメタイ・・アイシテルヨ』
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