テキスト

□対戦
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「…さて、私の方はもう準備も整ったあ
るよ」

「そうか…私もすでに準備は済んである


「おぉ、流石あるね。それじゃあ、そろ
そろ始めるあるよ。…あ、一応言ってお
くが、お互い手加減は無し、あるよ?」

「当然だ。折角の手合せに手加減などし
たら台無しだし、相手にも失礼だ。私も
、そのくらいは弁えている」

「それなら問題無さそうあるね。いやは
や、こうしてルゼリオと手合せ出来る機
会に恵まれて私、とても嬉しいあるよ。
久し振りに骨のある者と戦えそうある」

「それは私も同じ事だ。経験を積む良い
機会にさせて貰おう」

何処までも広がる荒野に対峙する、2人
の男。
1人は白いマントをなびかせる金髪の男
──ルゼリオ、もう1人は龍のような耳
を生やした男──玉泉。
会話そのものは至って穏やかなものであ
るが、ぶつかる眼差しはまさに鬼神の如
き鋭さと荒々しさに支配されていた。
ビリビリと張り詰めた空気が辺りを包み
込み、その場に居るだけで強いオーラに
圧倒されてしまいそうだ。

そして、2人から少し離れた所で傍観を
決め込んでいるのは、2人の男女。
2人共玉泉とルゼリオそれぞれを師と仰
いでいる所謂弟子で、名は男性の方は緋
影、女性の方はユラハという。
この手合せではあくまで玉泉とルゼリオ
の一騎打ちである為、緋影とユラハは決
して手出しをしないように、と師からき
つく申しつけられていた。

「しかし、どちらかが始めの合図をかけ
るのも、公平性に欠けるな…おいユラハ
、お前が合図をしろ」

「ふぇっ? あ、あたしですか? うー
…何か緊張するなぁ…コホン、それじゃ
あ…始めッ!」

行き成り名指しされて思わず間抜けな声
をあげるユラハであったが、ルゼリオか
らの言いつけをきちんと守るつもりはあ
るようで、2人の間に歩み寄ると2人を
交互に見比べてから大きく息を吸い込み
──合図を高らかに告げる。
最初に動いたのは玉泉。
足音を立てぬ程の軽やかなステップで地
面を蹴り上げるとその反動と自慢の脚力
で一気に駆け出し、ルゼリオがハッとな
った時にはすでに、玉泉の姿は忽然と消
えていた。

一体何処へ消えたのかと唇を固く噛み締
めながらあちこちに視線を彷徨わせるル
ゼリオ。
…と、彼の真横から玉泉の声が飛来した


「先手必勝あるよ」

横か──…!? とルゼリオが声のする
方へと視線をずらすも、時すでに遅し。
ルゼリオの脇腹に、凄まじい衝撃が走り
抜けた。

「──っ!」

風の如き速度でルゼリオの間合いに詰め
た玉泉が、稲妻のような鋭い蹴りを放っ
たのだ。
あまりの衝撃に、後方に吹き飛ばされる
ルゼリオ。
土埃が立ち込める中玉泉はルゼリオの姿
を探すべく視線を彷徨わせれば、土埃の
中から白い影が浮かび上がった。

「成程…この速さを目で追うのは至難の
業だな…。咄嗟にガードしていなければ
、危なかった」

「おや? ちょっと蹴りの入りが浅いと
思ったら、間一髪腕でガードされてたあ
るか。流石に、一撃で勝負がつくとは思
ってはいなかったあるね」

咄嗟に腕で防御した為直撃は免れたもの
のそれでも衝撃は凄まじく、今でも腕が
ビリビリと痺れており暫くの間は使い物
にならないだろう。
軽口を交わす2人であるが攻撃の手を緩
めるつもりはさらさらなく、追撃に入ろ
うと玉泉が構えを取った、まさにその時
であった。

背後からゾクリと背中を撫で付けるよう
な殺気を感じたかと思えば、玉泉の影が
蠢き始めそこから死神鎌を構えた黒い人
影が姿を現した。
それは玉泉の影から飛び出すと、手にし
た死神鎌を横一線に薙ぎ払う。

瞬時に反応し背後を振り返ると同時に一
歩後退し、続けざまにバック転をして迫
り来る凶刃を軽やかに回避してゆく。
ようやくルゼリオの魔術が解けると、黒
い影は跡形も無く消え去った。

「今の黒い影は、魔術あるか? いや〜
魔術とは面白いあるね。戦い甲斐がある
よ」

「ほう…刃を全て回避するとは、予想外
であったな。成程、此処まで手応えのあ
る相手は本当に久しいな」

互いに額に浮かんだ汗を拭いつつ、息を
飲むような緊迫した技の応酬を繰り返し
ながらも2人の顔には何故か楽しそうな
、高揚した気持ちを抑え切れないような
表情が浮かんでいた。
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