テキスト

□うたた寝
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 ある晴れた日のことだった。
 昨日までの雨のおかげで瑞々しく輝く木々や草花を眺めながら崘は歩いていた。政務の合間の散策も雨が降り続いた数日はおあずけだったけれど、この爽やかな空気を堪能する為だったと考えればすべて帳消しになる気さえした。

「……あら?」

 ふと前方に見知った人影が見えて、崘は足を止めた。目をこらし、ゆっくりと歩を進めてみれば、やはりそれはよく知った人物だった。

「まあ、ルー君たらまた……」

 木陰に座り、幹に背を預けて眠るルポの姿に崘はため息をついた。相変わらずな様子に苦笑する。

「でも、仕方ないかもしれませんね」

 柔らかな日差しは暖かくて心地良い。
 崘は気持ちよさそうに寝息をたてる青年を見下ろすと、少しだけ考え込んで自身もその隣に腰を下ろした。
 上を見上げれば風が葉を揺らしさやさやと音をたてる。その音も何だか心地よくて、崘はそっと目を閉じた。

* * *

 ふと肩に重みを感じてルポは目を覚ました。

「……っ!」

 何の気なしに横を向き、そこにあった顔に飛び上がりそうなくらい驚いた。

「何で崘が……」

 隣に座り、しかも肩に頭を乗せてすやすやと眠っているのか。
 無防備な寝顔に心なしか鼓動が早まる。思わず距離をとろうとするも、僅かに動いた拍子に眉をひそめて縋るように服を掴まれてしまっては、それ以上動くことは出来なかった。
 起きてしまうかとも思ったが、崘は変わらずすやすやと眠っている。

「ったく姫さんよぉ、人の気も知らねえで呑気なもんだな」

 試しに頬をつついてみるが起きる気配はない。何だかおかしくなってきてルポは口元を弛めた。

 たまにはこんな日もいいか――。

 穏やかな日差しを注ぐ太陽を見上げ、ルポはまた静かに目を閉じた。


END

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