捧げもの

□悪役の災難
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 身の丈190センチはあるだろう体格の良い美青年が悪役の髪を掴んでいたのだ。その片手には女性か好んで着そうなフリルが沢山施してある衣装を持っていた。

「絶対に着ないからな!」

「なによいけず!少しくらい良いじゃない。ラウラちゃんもそう思うでしょ?」

『俺に話振らないで欲しいんだけど?そもそもシャルム、ワカメ捕まえるの一応は手伝ったんだし、あの話忘れてないよな?』

「まさか〜、アタシがそんな大事な約束忘れるわけないでしょ!ラウラちゃんの素敵な衣装アタシが作ってあげるわ」

 どうやら悪役を捕まえるのに手を組んでいたらしい一人と一匹。そこまでして自分に服を着せたいのか……。最早、あきらめと溜め息しか出てこない。
 

「ほう、名をシャルムだったか?お前は服を作れるのか?」

「あらあら、これはまた真っ白な子だこと。お名前は?」

 シャルムと呼ばれた青年は何だか楽しそうに笑顔を向ける。悪役からしてみればシャルムの笑顔など悪魔よりも恐ろしく感じられるが、彼女は違うらしい。
 
「私の名はソルだ。シャルム、と言ったか?私はお前の衣装センスはなかなかだと思う。良ければだが私の衣装も作ってはくれないだろうか?」

 途端にシャルムの瞳が輝き出す。衣装を作ることが好きな彼からすればソルの申し出は大変嬉しいようで、今まで掴んでいた悪役の髪を離しソルの手を握りしめる。

「えぇ、是非作らして頂くわ〜!可愛い子も大好きだけれど、美人さんも大歓迎よ!」

 そうとう嬉しいのか、身体をくねらすシャルム。それを見ていた悪役とラウラは一言“キモい”
 言わずとも二人の頭にシャルムの制裁が加えられた。仮にも乙女心を持った青年だ。流石にキモいと言われれば怒るのも無理はない。

「失言だったな……」

『マジで叩くとかあり得ねーし!それでも筋肉ムキムキな──』

「何か言ったかしら?」

 声のトーンは優しいが、顔が笑っていない。流石にこれ以上はヤバイと感じたのか、ラウラは自分の手で口を塞ぐ。

「さあさあ、行くわよ三人共!アタシがとっておきの衣装を作ってあげるから!」

「待て!私はお前の衣装等着ないぞ!」

 悪役はシャルムに訴えるが、聞いてもらえるはずもなく、悪役はずるずると彼に引っ張られながらもむなしい抵抗をするのだった。


end?
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