捧げもの

□刑という名の戯れ
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春は出会いと別れの季節というが、今日、今この瞬間ある国との友好条約を深める為、夜桜見物という催しが開かれていた。
勿論この催しにはそれ相応の者たちが招かれる訳なのだが、一見ただの花見だ。
桜の木の下に雑魚を敷き、騒ぐ光景はまさに宴会場だ。

「ルポ殿、皆騒がしいと思いませんか?」

「まぁ良いんじゃねぇかぁ?互いの交流を深めてる訳だしよぉ」

二人以外の者はもうお祭り騒ぎ状態である。
この機にナンパを始める者もいれば酔って絡んでいる者もいる。見る限り悲惨である。

大きな桜の木に背を預け、イルイとルポは酒を飲みながら回りの惨状に苦笑いするしかなかった。といってもイルイは勤務中である身。酒を飲む訳にもいかずルポの隣に腰掛けているだけだ。そんな真面目なイルイにルポは冷ややかな視線を送る。

「勤務中だからって酒飲まねぇってお前、どんだけ真面目なんだよ?」

「真面目?勤務中に酒を飲まないのは一般常識です。ルポ殿も勤務中に酒は飲まれないのでしょう?」

「いや、飲むぞ」

まさかの返答にイルイは目を丸くする。勤務中に酒を飲むなど言語道断。
互いに誰かに使えている身でありながら何故こんなにもルポは自由奔放なのか…。
イルイにはルポという人物が理解出来なかった。

「あ゛?何ジッと見てんだぁ?…──あっ!良いこと思い付いたぜ!!イルイ、俺と手合わせしねぇか?」

やはりこの者は理解できない。何故突然“手合わせ”をしようなど言い出すのか。そもそも客人であるルポに剣など向ける訳にもいかない。聞くところによればルポは偉い方の娘に使えていると聞いた。自分も偉大な主に使えてはいるが、やはり客人に剣を向けるなど己には出来ない。

「ルポ殿…。申し訳ないのですが、そのご要望には……えーと、ルポ殿?何を…」

「はぁ?見てわかんだろ!髪が邪魔だから結んでんだよ。おっ、出来た!これでアンタとやれる!」

ルポはやる気満々なようだ。しかももう刀を抜いている。回りの者たちもルポが刀を抜いたことで何事かと集まって来ていた。

「俺が勝ったらアンタには酒を一気飲みしてもらうぜぇ?」

「貴方と刃を交えることなど出来るわけないじゃないですか!?」

「ハッ、なら背に背負ってる“獲物”はお飾りか何かかぁ?見る限り立派な剣みたいだが……持ち主がお前じゃその剣も可哀想だなぁ」
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