捧げもの

□刑という名の戯れ
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先程からルポはイルイを挑発するような言葉ばかり投げ掛けてくる。勿論イルイも馬鹿ではない。簡単に挑発に乗るようなことはしない。

「ルポ殿。いくら挑発しても私は剣を抜きませんよ?」

「ケッ、お前がそんな堅物だとセトルスも思いやられるな。時には柔軟に物事考えねぇと………死ぬぞ!」

「なッ!?」

イルイが剣を抜かないとわかった上でルポは刀でイルイに斬りかかる。それをイルイは瞬時に避ける。

「いきなり何をッ!?」

「あ゛?手合わせって言ったじゃねぇか?」

「だからっていきなり斬りかかることはないじゃないですか!」

流石にルポの所業にイルイも腹を立てる。まあ、いきなり斬りかかれて怒らない方が可笑しいのだが…。

この二人の騒ぎを聞き付け、セトルスが杯片手に千鳥足でやって来た。酔っているのかほんのり頬は赤くなっていた。

「な〜に、二人で盛り上がっているんだい?楽しいことなら是非とも私も混ぜてもらいたい」

「何を仰いますか!セトルス様は危ないので御下がりください」

イルイの言った意味が理解できず、二人を見るセトルス。しかししばらくすると今の状況を理解したのか独りで納得したように頷き、ある事を言い出した。

「負けた方は肉球ふにふにの刑だ!これは決定事項だからお前たちに拒否権はないよ」

「「は?」」

突然のことに二人は目を丸くする。セトルスがこのようなことを言い出したからにはイルイは剣を抜くしかない。勿論セトルスの“肉球ふにふにの刑”が嫌だからだ。肉球は敏感な箇所であり、ふにふにと触られると身体中がむず痒くなる。それは獣のルポも同じで、考えただけでも身の毛がよだつ。

「俺は肉球ふにふにはイヤだからなッ!セトルスに捕まったら最後、半日は肉球をふにふにされ、身体中を撫でまわされるんだからな!」

「わ、私も肉球ふにふには……遠慮したいです」

結論二人ともその刑は遠慮したいのだろう。互いに武器を構える姿に先程の余裕はない。是が非でも勝たなければ二人にとって恐ろしい刑が待っている。

「ルポ殿。悪いですが勝たせていただきます。私か貴方。どちらかが互いの武器を弾いた方が勝ち……。どうでしょう?」

「ふん。やっとやる気になったか!アンタの提案には従うが……負ける気はねぇッ!」

互いに真剣な眼差しでにらみ合う。こんな光景をセトルスは内心ワクワクしながら見ていた。彼からしてみればどちらが勝手も負けても関係ない。どのみち二人ともセトルスによって“刑”は執行されるのだから。





刑という名の戯れ





(さぁ二人とも肉球を差し出したまえ!)
(ざけんなセトルス!!ってぎゃあぁーー!?)
(ルポ殿ーー!!!)


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