捧げもの
□仲良し大作戦
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中庭のオープンテラスにそよ風が吹き抜ける。
そよ風は中庭のテラスにいる二人の髪を撫でた。
蒼い髪に大きなリボンで髪を一つに束ねている一見女性のような可愛らしい容姿をしている少年。いや、青年エルノがいた。
午後のティータイムではこの城にやって来て紫岐と雑談したり美味しい菓子を食べるのが日課となりつつあった。そんな今日は丸いテーブルに置いてある色とりどりの饅頭を紫岐と一緒に食していた。
「美味しい!」
「おや、気に入ってくださいましたか?」
エルノの目の前にテーブルを挟んで座っている紫岐は美味しそうに饅頭を食べているエルノを見て微笑む。
「フフフ、本当に貴方は女性のようですね?」
「それは紫岐さんも同じじゃないですか?」
「貴方程ではありませんよ。それよりも気を付けてくださいね…」
フフフと紫岐が不気味に笑えば、先程まで幸せそうにケーキを頬張っていたエルノの顔が一瞬引き吊る。
「何ですか?その不気味な笑い方…」
「いえ、先程から貴方を狙っているお馬鹿さんがいるみたいで…ねぇ」
ゆっくりと紫岐が指を差す。そして、その方向をエルノが見れば、直ぐ後ろにはエルノを見つめる人影があった。
「うわあぁっ!?な、何ですかこの人!?」
“この人”とは白と黒の髪色をしている青年─白羅─のことだろう。。
白羅はエルノの肩をガッシリと掴んだ。その時、エルノから引きっつた事が聞こえるが白羅は気にも止めず、まじまじとエルノを見回した。
「白羅やめなさい。エルノが怖がっているでしょうに」
「まぁまぁ、そんな風に言わんとってぇなぁ〜。何や可愛い顔した子が来たって情報が入ってなぁ」
またエルノの顔をまじまじと見始める白羅にエルノはただ戸惑うしかなかった。
「紫岐さん!この人どうにかしてください!!」
「無理です」
きっぱりと断られると思っていなかったのか、エルノはキョトンとしてしまった。しかし、これが白羅には逆効果で、エルノは白羅に抱きつかれてしまう。
「アカン…。そのキョトンとした顔最高やで!」
「僕は男ですから!?」
「えっ!?そうなん?」
白羅の腕の中で、男だという事実を述べれば、あっさりとエルノは白羅から解放されホッと胸を撫で下ろす。しかし、反対に白羅はしまったとでも言いたげな表情で頭を掻いていた。
「あぁー…ホンマごめんな。てっきり女の子やと思ってしもうて…堪忍な?」
「まぁ…男だと分かってもらえたなら……」
「許してくれるん!うわぁー優しいなぁ!名前何て言うん?」
瞳をキラキラとさせ名前を訊かれれば答えないわけにもいかない。渋々、名を答えれば、白羅は何度もエルノの名前を連呼した後、エルノの肩をポンと叩いた。
「よっしゃ!エルノちゃん!出会ったのも何かの縁。オレが何か料理作ったるで!何がえぇ?」
「えっ!?いきなり言われても…」
甘いものは好きだ。いや、大好きだ。しかし、今まで饅頭を食べていたため更に甘いものを食べようという気にはなれない。だからといって白羅の善意を無駄にはしたくはなかった。その為、エルノは黙り込み悩んでしまった。
「エルノちゃん。そんなに深く考えんとってぇーな」
ニコニコと微笑まれれば
、更に悩んでしまう。うーんと眉間に皺を寄せ悩んでいるエルノの姿は中々お目にかかれないだろう。
「じゃあ、貴方のおすすめ料理や得意料理ってあります?」
「白羅の得意料理はお好み焼き、たこ焼きや!俺はどっちも好きやなぁ〜」
「なっ!?ギル!」
ひょいと現れたのは緑の髪をし、エルフ耳をしたノリの良さそうな青年─ギル─だ。
ギルが何処から現れたかは不明である。しかし、ギルが現れた事によってエルノの表情が少しこばわるのが見てわかった。