短編小説

□桜の花は時に残酷で…
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はらりはらりと散る桜の花びらを私は眺めていた。

一番儚く、そして綺麗な花だと思う。
しかしそれは意図も簡単に散って行く命と同じようで……

今から大きな戦争が起こるというのに桜の花は本当に綺麗だった。


「また、この桜を見れるだろうか…」


この世界を巻き込む大きな戦争。それは邪神との戦争。強大な力を持つ二神の戦争に自分も参戦する事に悔いはない。
むしろ、この世界に再び平和が戻るためなら命を惜しまない覚悟だ。
しかし、単に死ぬのは御免だ……
私には仲間がいる。

ちらりと周りを見渡せば自分の仲間たちが桜を見ながら杯を交わしている。
このほんの少しの平和な時間が続けばどれだけ幸せだろうか……


「銀楼ー!何突っ立てんだよ」

「此方で一緒に酒飲もうぜ」


桜の木の下で酒を飲んでいる仲間たちに呼ばれ銀楼が振り返ると一陣の突風が吹き、桜の枝を揺らし花びらを散らした。


「散りゆくのもまた定め……いや、私は桜のように簡単に散りはしない」


私には守るべき仲間がいる。やっと私に訪れた幸せを邪神などに壊させはしない。たとえそれが世界を敵に回したとしても。


「オイ銀楼の大将ー!早く一緒に酒を飲みましょーぜっ!」

「わかった。だからそう急さないでくれ」


また仲間に呼ばれ銀楼は仲間の元へと歩んだ。

銀楼が一度桜の方を振り返ると太陽に照らされた桜はいつにもまして美しく咲き誇っていた。






桜の花は時に残酷で…






(私は守るべきものを失った。仲間も何もかも……
何故桜だけは咲き誇っているんだ……)




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