短編小説
□青き龍の信じる者は…
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蒼天の空がとても眩しかった……
しかし、その美しい蒼天とは裏腹に己の身体からは止めどなく紅が流れ出ていた。
『我は………死ぬ…のか…』
やっと絞り出し発した言葉は自分の死を悟ったかのようで、無性に可笑しな気分になった。
『フッ…我が死を認めるなど……堕ちたものよ…』
本当は死を認めたくなどなかったが、今のこの状況を見れば誰しもが助からないと口を揃えて言うだろ。
本来の姿である青龍の姿で森の中で横たわっている瑠祇の身体には何者かによって付けられたであろう刺し傷や切り傷が大量にあった。特に一番深い刺し傷は肺にまで達するものまである。そんな多くの傷からは当然ながら大量の血が流れ出ており、瑠祇の周りに生えている草花は真っ赤に染まっていた。
『ゴホッ…ガハッ!……』
無意識に咳き込めば口からは大量の血が吐き出された。
それが苦しくて、酸素を求め口を開閉するが効果などあるわけがなく、次第に呼吸は浅くなっていった。
『……やはり………死ぬ、のかッ…』
本当は死にたくないと思いながらも傷付いた身体は言うことを利かず鉛のように重かった。
生きたい…
そう願っていても皮肉にも身体から流れて行く紅が己の命を短くしていた。
『………雪……』
蒼天からはパラパラと雪が降り始めた。
雪は強さを増すわけでもなくただパラパラと降り、瑠祇の身体に落ち溶けるだけだった。
しかしその雪でさえ今の瑠祇にとっては致命的でじわじわと体温を奪っていく。
それと交差するかのように呼吸をするたびに喉からはヒューヒューと音がし始めた。
『…これが………死…』
死ぬのは意図も容易いものだな……
次第に霞んでいく視界。
朦朧とする意識の中で瑠祇は何かを見つけた。
『…赤い珠…の首飾り、か…』
霞んだ視界でもはっきりと分かる緋色の首飾りは己の流れ出ている紅とは違い、とても綺麗でこの場には不似合いだった。
だが、その首飾りを眺めていた時、突如茂みから音がし、瑠祇は視線だけをそちらに移した。
しかし霞んだ視界では最早何がそこに居るのかさえ判別できなかった。
『グルルゥ…』
瑠祇は己を追ってきた追っ手だと思い、力を振り絞り唸り声を発した。
しかし茂みから現れた者はそれに動じる事なく瑠祇の前までやって来た。
「血の臭いがすると思って来てみれば…龍がこの様な森に居るとは……──大丈夫。私は敵ではないよ」
その男は手を伸ばし、いまだに唸り声を発している瑠祇の鼻先に優しく触れた