Sweets Collection

□マロン
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塚佐は自分に背を向けたままの京野をじっと見つめる。
フリルのついた白いエプロンの肩紐が背中で交差して、腰の辺りでは脇紐がリボンが結びを作っている。

京野は戸口に立つ自分に気づく様子はなかった。
思わず、抜き足差し足後ろから忍び寄って「わっ!」と、驚かせてみたくなったが、そんなことをしたら正直あとが怖い。
「俺の後ろに立つな」とばかり、京野なら「俺」ではなく「ぼく」だが、ボコボコにされることはなくても、きつい眼差しで挑むように睨まれるだろう。

いや、きつい眼差しを向けられるのはちょっとゾクゾクくるものがある。
しかしそんなことを口にすれば間違いなく今度はヘンタイと罵られる。いや、罵られるのもイヤではないが、自分のM的属性を少しばかり意識すると、首を振って理性を召喚した。

この程度の妄想なら大丈夫。すぐに普段の顔に戻せる。
妄想の具現化は別の機会に期待するとして、TPOくらい考えられる。そのための理性だ。

「ミチルさん」

塚佐は京野に声をかけた。

「ああ塚佐か」

京野が笑顔で振り返る。

まるで自分が来るのを待っていたといわんばかりの表情だ。
塚佐は幸せな気分になってくる。

しかし近づき京野の前にあったものを見て、笑顔の理由を知った塚佐は肩を落とした。

「見てよ、これ」

京野がその一つを手に取って、塚佐に差し出した。

「へえ、どうしたの? これ」

(そんなことだろうとは思ったけどさ)

些細なことだと思う。要は自分の思い込みで、京野のせいではない。
それは分っているが。
 
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