Sweets Collection

□アラカルト(後編)
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ちょっと素直に言ってみたら、これか。
つい口を尖らせ、横を向く。

「何? またそうやってすぐ怒る。ほら理留」
「なっ」

機嫌を取るようにいなされて、伸びてきた塚佐の腕に抱き寄せられたのは一瞬だった。
今履いているサンダルのせいで、身長差はなく、上を向かされることもなく、首を傾けた塚佐に唇を塞がれる。

「お、おい、こんなところで――」
「ちょっと黙って。もう暗いし街灯まで離れてるし、分からないって」

優しいキスだ。
理留がよく知っている唇。
今はときどき見せる貪るような激しさはなく、ほんの少しだけ深く重ねて舌先を搦め合った。

「続きはさ、アンジェリカに帰ってから、ね?」

唇を離した塚佐が、耳元に声を落としていく。

「バ、バカ。知るか。そんな帰ったらなんて……」

帰ったら、もっとキスをしてくれる?

思わず顔が赤らんでくるのを止められない。
でも本当に日が沈んで辺りは暗く、どんな顔色してるかなんてきっと分からない。

だから、ちょっと考えて理留は口を開く。

「帰ってからするのはキスだけ?」
「え、それは……理留さえ…よければ……」

塚佐が口ごもった。
想像したようだ。
あれとかそれとか。
キス以上のもっとすごいのを。

理留も同じように考えたことは胸のうちにおさめておく。

「今日はパスタの気分なんだよね。トマトとナスのが食べたい。ご飯作ってよ」
「パスタ……トマトとナス……仕上げにスライスしたモッツァレラチーズのトッピングなんだね……何だかなあ」

塚佐は最近、スイーツ以外のレパートリーも順調に増やしていた。
それもすべて何かとスイーツだけで終わらせてしまいがちな理留に普通の食事をとらせるためだ。

「じゃあ早く帰ろ?」

これ見よがしについたらしい塚佐の溜め息は聞かなかったことにして、理留は続けて言った。

「デザートは今の続きね。とても甘い一品でお願い」
「え……それ……、わ、分かった。とっておきのものをご用意します」

お嬢様、と言われたから、さすがにそれは居心地悪くなり、理留はそっぽを向いた。

でも。
塚佐の作るスイーツが最高だということは誰より一番分かっている。

さりげなく横に並んで、こそりと手の甲を触れ合わせた。
すぐにぎゅっと握り返され、それから指を一本ずつ絡めた。


 
 
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